兵庫県西宮市から神戸市灘区を中心に明治末期から昭和初期にかけて芽生えた“阪神間モダニズム”というハイカラでモダンな生活文化。その洗練された空気を、〈デルフォニックス〉代表の佐藤達郎さんと一緒に、のんびりと散歩しながら味わってみました。
ローカルな甲陽線に揺られ、
夙川の洗練された暮らしを知る
翌朝、再び六甲山を越え、今度は夙川周辺を散策することにした。お目当ては夙川駅から北に延びる阪急甲陽線。3つの駅を、3両編成の電車が走るローカル線だ。「かつて甲陽線の苦楽園口駅周辺にはラジウム温泉が湧いていたそうです」と佐藤さん。だが、1938年の阪神大水害で源泉が枯れてしまう。その被害の大きさは、谷崎の『細雪』にも克明に描かれている。
今では苦楽園口といえば夙川沿いの桜が有名で、周辺には高級住宅地が広がっている。それなのに駅は改札口が2つ、3つの小さなもの。「でも、この素朴さがいい」と佐藤さん。
「ほっとするというか、逆に上品な印象を受けます」