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# 消費税

消費増税は「日本の二極化」を加速度的に広げるという不都合な真実

与党も野党ももっと真剣に考えてほしい

参院選の争点

7月21日の投開票に向けて参院選が動き出した。「衆参同時選挙説」や「消費税率引き上げ見送り説」などがまことしやかに流れたが、結局は普通に参院選のみが行われ、どうやら消費税率引き上げも当初の予定通り、10月より実施される運びとなったようだ。

このように、予定通りに消費税率引き上げが実施される見通しになったことから、今回の参院選では自民党の獲得議席が40議席台にとどまる「大敗」になるのではないかという見通しも一部あるが、現時点での各種世論調査では、与党全体で10議席以内の減少にとどまるという見通しが大勢のようである。その程度であれば、前回大勝の反動減の範囲内ということになる。

また、ある世論調査では、今回の参院選の争点として1番に挙げられているのが、「社会保障・年金問題」となっており、消費税は4番目くらいの争点となっている。消費税問題が軽視されているともいえないが、この調査がある程度真実だとすると、消費税率引き上げに対する怒りで与党大敗というような構図でもなさそうだ。

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与党は、社会保障財源に消費税収の一部を充てるという方針を明確にしているのだが、それに対する野党は、消費税率引き上げに反対の姿勢を鮮明にしている。

まあ、それはいいとして、野党は例の「2000万円問題」が攻めどころととったのか、「2000万円問題」をたてに現政権の社会保障政策の不備を指摘する一方で、「一生安心できる社会保障・年金制度を再構築する」と主張することで参院選勝利を目指しているようだが、これは戦略的に大きなミスではないかと考える。

 

この「2000万円問題」、確かに消費税率を引き上げ、国民から所得の一部を召し上げる一方で、「老後の生活のすべてを国で面倒見切れないのであと2000万円程度は自分で勝手に貯金してください」と言っているに等しい。

そのため、多くの国民の怒りを買ったと思うのだが、国の年金だけで豊かな老後を送ることができないのは周知の事実であるため、現時点では、多くの家計は、怒りを投票行動にぶつけてあらためさせようというよりは、将来についてあらためて考えてみようというスタンスの方が強いと思われる。

したがって、「2000万円問題」は与党にとっては確かに大きなミスではあったが(それがわざわざ選挙のタイミングで金融庁から出てきた理由はよくわからないが)、いまの野党の経済に対する実力ではそこを攻めても効果がない。現に、ほとんどの野党は社会保障・年金の財源に対してはあまり踏み込んだ発言はしていない。

一般国民には負のイメージがあると考えているのだろうか、例えば、「(少なくともデフレ解消までは)国債の増発で賄う」というような発言は見られず、「法人税率の引き上げ(内部留保税に対する課税という意味も含まれているように推測する)」を主張することが多いような印象を持つ。

これは、「負担は家計ではなく企業に」ということだと思うが、多くの家計の世帯主が企業から雇用されている身であることを考えると、企業に対する増税は、収益環境の悪化につながるため、賃金の引き下げ圧力を高めることになる。また、そのために、正規社員の削減と非正規社員の拡充という流れも強まるかもしれない。

さらにいえば、従業員数自体を削減させる動きになる可能性もある。中小企業の場合は廃業の増加という話につながるかもしれない。かつてのマルクス主義的な「資本家VS労働者」のような構図は年金・社会保障問題の解決策にはならない。

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以上より、社会保障費の財源問題で増税を主張する場合には、それが消費税でも法人税でも影響は「似たり寄ったり」になる可能性が高いということになる。野党が財源問題に対して増税という形態で真摯に向きあうのであれば、むしろ、資産課税の強化、もしくは相続税率の引き上げを主張すべきではなかったかと考える(それ以前に年金や社会保険料はきちんと徴収できているのかという問題もある)。

 

しかし、これは、どちらかというと、高齢者に対して厳しい税制となるため、「選挙戦術」としては主張しにくい増税メニューということになるのだろう。

そう考えると、今回の参院選の争点のうち、将来の日本にとって極めて重要な問題である社会保障・年金問題、そして、その財源となりうる税制問題については、残念ながら、与党と野党で実質的にはそれほど大きな意見の相違はないということになるのではなかろうか。

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