親の過干渉から逃れるために高校を中退

1カ月ほど経って、親方が飲みに連れて行ってくれた。「身寄りはないのか?」と親方が心配する。「はい」。すると親方は、「じゃあ、嫁さんでも見つけてやらなきゃなぁ」と親身になってくれた。「このままではいけない」と我に返り、すぐに東京に戻った。

学校に行くと、取り調べの続きが待っていた。「共犯は誰だ? 言わないと学校に戻れないぞ」と脅された。「だったらやめる」と告げて学校をあとにした。 

学校をやめるという晴男さんに父親は、「いま学校をやめれば、さらに厳しい道を歩むことになるぞ。覚悟はできているのか?」とだけ尋ねた。晴男さんは不安でいっぱいだったが「大丈夫」と答えた。それから「大検」のための塾に通った。ガソリンスタンドや喫茶店でバイトもした。

「このときの僕の心境は非常に複雑で説明しにくいんです。道から外れてしまったという 恐怖はありました。そのころ、『車輪の下』というヘッセの小説のハンスという少年に、よく自分を重ねていました」

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塾で、カノジョができた。すると、母親は必死に彼女の素性を調べようとした。「こんな状況になってまで僕に干渉するのか !? 」と、晴男さんは絶望的になり、改めて正式に家を出る決意をする。

新聞奨学生となり、住み込みで新聞配達をすることにした。真夜中に起きて暗いうちから配達が始まる。なんとか1年間勤め上げ、奨励金をもらい、それを敷金・礼金にして小さなアパートを借りた。一方で、「もう大学の学費を親に払ってもらうのは無理だな」と思い、大学進学をあきらめた。どうやって生きていけばいいのか、必死に考え、派遣社員に登録した。

同級生たちがまだ高校3年生で、受験勉強にいそしんでいたころである。おそらく選択肢はかなり限られる。まわりのひとから信頼され、そのなかでチャンスを得るしかない。「過去の仲間の背中や、成れない自分を追いかけるのはもうやめよう」。自分にそう言い聞かせた。 

病院の資材倉庫に派遣された。数年がたったころ、その業務が外部の会社にまるごと委託されることになり、どうせならその会社に就職しないかと誘われた。 喜んで誘いを受け、「準社員」として採用された。さらに2年が経ったとき、「正社員」 にならないかと誘われた。願ってもないチャンスである。このとき晴男さんはすでに 27 歳 になっていた。