7pay事故で判明、日本の「キャッシュレス化」がじつは危ない理由

フィンテックには管理強化が必要
宿輪 純一 プロフィール

産業政策として始まったキャッシュレス

安倍内閣は、経済産業省が主として政府を組成し、政策を遂行している。その最近の目玉政策の1つがキャッシュレス戦略(『キャシュレス・ビジョン』:平成30年4月)である。

キャッシュレス戦略の対象は、電子マネー(前払=金融庁所管)、デビットカード(即時払=金融庁所管)、クレジットカード(後払=経済産業省所管)である。

そのうち、デビットカードの使用金額はクレジットカードの約1/60で、その対象とするには規模が小さすぎる。一方、電子マネーの平均月間使用金額は約1万3000円であり、クレジットカードは約5万4000円である。

ただ電子マネーについては、特にメインの交通系電子マネーは2万円の上限があり、金額の増加が望めない状況である。つまり、キャッシュレス戦略とは、経済産業省の所管であるクレジットカードの使用を増やすものと考えられる。

弊書『決済インフラ入門(2020年版)』(東洋経済新報社)『通貨経済学入門(第2版)』(日本経済新聞)にも書いたが、今後、経済産業省所管の「企業ポイント」が「企業通貨」へと発展していくなか、リテール系でのマネー系商品の争い、つまりは企業系なのか、通貨系なのかの境界がなくなり、シェア争いや地位保全の競争が激化する。

その1つが、経済産業省がマネーの分野まで踏み込んだキャッシュレス戦略である。が、財務省・金融庁はこれに対し、新紙幣・新貨幣を発行することで対抗している。

 

キャッシュレス戦略の中で、修正した方がいいと筆者が考えている箇所がある。前述の報告書『キャシュレス・ビジョン』の中で、スマホ決済のことを「デジタル・ウォレット」と名付け、前述のキャッシュレス分類からすると「デビットカード」に定義しているが、ここが疑問である。この分類のために、各種報道もスマホ決済が何者であるかが混乱しているのである。

スマホ決済とは、それまでのプラスチックカードがスマホに入れ替わったものである。スマホがカードより優れた機能として、カメラとネットワークがある。そのため、QRコードの読み込みが可能になる。そして、この機能は、電子マネーも、クレジットカードも持っており、デビットカードだけではない。この考え方は「~ペイ」も同様である。

「決済インフラ」についていうと、金融機関が中央銀行や銀行協会、証券業協会などと協業するといった「金融がITを」取り込んでいく方向が一般的であった。

しかし、今のいわゆるフィンテックが発展している形は、それとは逆で「ITが金融を」取り込んでいくという形である。そのため、当たり前となっている金融の大原則であることに対応できていないことがある。

それは「善と悪の判断」と「顧客の保護」である。その点が、フィンテックの分野ではやや甘くなっているのではないか。そのため、暗号資産(仮想通貨)も含め、セキュリティやマネーロンダリングの対応が甘く、金融業界ではあり得ない事件が発生する。