夏の定番「怖い話」がイマドキっぽく変化している深〜いワケ

怪異は人間社会を映し出す鏡だ
朝里 樹 プロフィール

田舎が「未知の領域」となった理由

こうした事情は、自動車にまつわる怪談においても顕著だ。

今どきの若者たちはあまり自動車に乗らなくなり、ドライブによる遊行が昔ほど盛んでなくなった結果、「友人同士で心霊スポットに出かけ、そこで怪異に遭遇する」という定番のパターンは、近年ではあまり語られなくなっている。

一方で、2000年代には移動手段に関わらず、若者が廃れた集落などに赴き、そこで古くからその土地に残る因習や儀式、封印された怪異と遭遇する恐怖譚がネット上で盛んに語られるようになった。

Photo by iStock

これはネットを使う中心世代であった当時の20代、30代が都市部に集中して住むようになり、多くの若者にとって過疎地が、自身が行ったことのない“未知の領域”となったことが影響を与えている。

そして、若者たちはその未知の領域を怪異の出現場所として選んだ。

 

夏休みに田舎の祖父母の家に遊びに行った青年が、身長2m40cmもある巨大な女の怪異に魅入られ、命の危機にさらされる「八尺様」。田園の向こうで奇妙な動きを見せる怪異を双眼鏡で覗き、それが何であるかを理解したために精神を壊されてしまう「くねくね」などが有名だろう。

田舎を舞台にした怪談が増えたのは、映画や小説、漫画などの影響もあると考えられるが、都市部での生活しか知らない人々が増えた結果、若者たちにとって「田舎は何か奇妙な怪物や因習が残っていてもおかしくない場所」として受け入れられる土壌ができあがったのだろう。