「乙武義足プロジェクト」発表の瞬間

だが、この日の主役はなんと言っても遠藤氏だ。

「今日は遠藤さんのほうから、いままで取り組んできたプロジェクトの発表があると思うので、よろしくお願いします」

落合氏がマイクを置いて次の予定のために会場を去ると、司会者がこう続けた。

「それでは次のゲストをお招きしたいと思います。ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員の遠藤謙さんです。よろしくお願いいたします」

義足プロジェクトはそれまで一切公表されていなかった。シンポジウムの参加者には、何が始まるのかまったくわからなかったはずだ。

「新しいプロジェクトのローンチ(立ち上げ)としてこの場所を選ばせていただきました。まずは映像を見てもらいたいと思います」

壇上の遠藤氏の一言で、プロジェクターに映像が映し出された。ランニングスタジアムでの撮影からたった3日で、鎌田氏が仕上げてくれたものだった。

ロボット義足を紹介するズームアップの映像からスタートした。続いて、画面いっぱいに、遠藤氏のMIT時代の恩師であるヒュー・ハー教授の言葉が映し出される。

障がい者というものは存在しない。ただ肉体的障がいを克服するテクノロジーがないだけなのだ

続いて、「OTOTAKE PRIJECT 2018」のタイトルが浮かび上がった。

会場は静まりかえっている。そこにいる誰もが真剣な表情で画面を見入っていた。

9分24分に凝縮されたこれまでの格闘

ドキュメント映像は、オキノスポーツ義肢装具での採寸の場面から始まった。

ソケットに足をつけただけの短い義足で歩いた瞬間。リビングのソファに座り北村にソケットを装着してもらう姿。少しずつ義足を高くして練習する風景。これまでのプロジェクトの取り組みが、つぎつぎに映し出されていく。

「これ(義足)でテレビのスタジオにスタスタ入っていったら笑えるなあって」などと無邪気に話している自分の姿が懐かしい。

映像はクライマックスに向かう。ランニングスタジアムでの歩行測定だ。腰が反っているせいで、お腹がぐっと前に出てしまっている。顔も緊張でこわばっていて、倒れそうになると情けない声が出る。お世辞にも格好いいとは言えないが、これが現時点でのベストパフォーマンスだ。

9分24秒。短時間の映像に、プロジェクトメンバーのこれまでの格闘が凝縮されていた。

OTOTAKE PROJECT公式HPより。これがこの日のシンポジウムで発表された動画のトップ画像だ