中国の空母「遼寧」が日本近海通過、その事実が暗示する恐ろしい未来

沖縄-宮古島間海峡を通過して太平洋へ
鈴木 衛士 プロフィール

早急に戦略面からの見直しが必要

空母「遼寧」を中心とする中国海軍の空母打撃群は、ようやくその運用が緒に就いたばかりと見られる。しかし、もう間もなく艦載機を満載した「遼寧」艦艇群が定期的に西太平洋を周回するようになるであろう。最後に今後の動向とわが国や米国などに及ぼす影響について考えてみたい。

 

(1)米国や他の地域に及ぼす影響
そもそも、空母というのは、その建造や運用に莫大なコストがかかる。旧ソ連も結局はこの負担に耐えられずに米国に匹敵するような空母部隊の建設を断念した。

一方で、中国が未だ堅調な経済基盤を背景にこの建設計画を推進し、独自に建造した新たな国産空母「001A型:70,000トン級」が進水して試験航行を実施中であるほか、「002型」と呼称される2隻目の国産空母も上海郊外の造船所で建造中の模様である。米国防総省は、この空母について2022年にも完成する可能性があると予想している。今後、中国は少なくとも4個以上の空母打撃部隊を編制するつもりであろう。これは、それほどまでに莫大な経費を投入しても、この投資に見合うだけの戦略上のメリットがあると確信しているからに他ならない。

中国の空母打撃群は、現時点ではとうてい米国の空母打撃群に匹敵するような戦力ではないし、将来的にも、中国軍が米軍に戦術面で互角に戦って勝てる相手ではないだろう。しかしながら、中国の空母打撃群によってグアムやハワイさらには米本土が弾道ミサイル以外の戦力で直接脅威にさらされるというのは、とても看過できないことであるだろうから、この対応に一定の戦力を拘置する必要が出てくる。したがって、いずれかの地域で米軍が多大な戦力を展開しなければならないときには、「極めて厄介な存在たりうる」ことが予想される。

また、米軍不在の地域における国々にとっては、この空母打撃群は相当な脅威となる。つまり、「世界の警察」という役割を放棄して孤立主義化する米国のすきを狙った戦略的地域における「力の外交」が可能となるということである。中国は、これだけでも十分なメリットがあると考えているのであろう。

(2)わが国に及ぼす影響
また、中国はこの空母打撃群を前述のような戦略的アイテムとして以外に、実際の作戦行動においても、南シナ海などにおける海洋権益の確保やシーレーン防衛に加えて、何よりも台湾有事の際に必須の機動部隊であると考えているに違いない。まさに前述した空母「遼寧」艦艇群の台湾周辺における活動がこれを裏付けている。

これは取りも直さず、尖閣諸島における有事の際にも同様にこの機動部隊が有効であるということであり、わが国はこの空母打撃部隊に対する防御作戦も考慮しておかなければならない。そのためには、東シナ海方面だけではなく、比較的防御が脆弱である太平洋方面からの攻撃にも備えなければならない。

たとえば、航空自衛隊は、F-35の配備推進はもとより国内各地域における機動展開能力をさらに拡大する必要があろう。また、海上自衛隊は、空母部隊の建設もさることながら空母機動部隊に有効な潜水艦部隊の増強を考慮する必要があろう。

そして、何より重要なのは、海空自衛隊の協同作戦及び日米共同作戦の強化であることは言うまでもない。しかし、トランプ大統領になってから、日米安保の片務性があらためて取りざたされるなど、日米共同作戦に過度に期待するリスクも考えなければならなくなってきている。

わが国は、独自に国を護る防衛力について、早急に戦略面からの見直しが必要となっているのではないだろうか。中国が、台湾や尖閣諸島での緊張をさらにエスカレートさせて、わが国が軍事的に対応しなければならなくなった際に、「中国の空母打撃部隊が日本海と太平洋からわが国を挟み撃ちするように取り巻く」というような事態が顕現する前に。

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