photo by Getty Images

中国で続発する「息子による実母殺害事件」繁栄のウラの人心荒廃

「群魔共舞の時代」が訪れている

偽装保険金殺人

最近、中国では妻や母親、果ては我が子を殺害するといった人倫にもとる惨劇が続発している。人心の荒廃がそうした殺人事件を誘発しているものと思われるが、ネットユーザーはこうした惨劇が頻発する世相を「群魔共舞(悪魔がはびこる)」の時代と呼んで嘆き悲しんでいる。

そうした世相を代表するのが、息子が実母を殺害した最近の事件である。

2019年7月4日午前中、四川省中部に位置する自貢市に所在する自貢市中級人民法院(地方裁判所)で、保険金目当てに実母を殺害した男に対し一審判決が言い渡された。

男は自貢市出身で32歳の付白蓮で、彼に下された一審判決は死刑、政治権利の終身剥奪であった。

判決を言い渡した後、裁判官は付白蓮に控訴するかと尋ねると、付白蓮は約10秒間沈黙し、裁判官が再度問いかけると、低い声で「検討します」と答えた。 

 

故郷の自貢市を離れて広東省広州市の某企業に勤めていた付白蓮は、2017年11月29日に母親の任芳(仮名)のために「人身意外傷害保険(傷害保険)」を契約した。その保険金額は40万元(約640万円)であった。

それから3カ月後の2018年3月9日、付白蓮は飛行機で四川省の省都・成都市に到着すると、その足でタクシーに乗って自貢市へ向かい、日付が3月10日に変わった深夜1時過ぎに実家へ着いた。

付白蓮は休暇の度に広州市から実家へ戻ると、2階にある母親の寝室に臨時のベッドを設(しつら)え、母親が眠りに就くまでよもやま話をして過ごすのが常で、近所では孝行息子と称賛されていた。

3月10日の深夜に自宅へ帰り着いた付白蓮は、ベッドに横たわる母親の任芳に対して帰宅の挨拶もそこそこに、電動按摩器を買って来たから按摩してあげると騙して、母親を長椅子に横たわらせてから、母親の両手に裸電線を巻き付けて身動きできなくすると電源をオンにした。

付白蓮が法廷で涙ながらに供述したところによれば、感電した母親はけいれんしてうめき声を上げながらも命乞いすることなく、じっと付白蓮を見つめて「息子よ、息子よ」と言っていたが、付白蓮は任芳の口を閉じさせようと横にあった木製の腰掛を手に取ると、任芳の頭部と顔面に打ち下ろして絶命させたという。

任芳は3月10日の朝7時過ぎに近所に住む長男の妻によって1階の台所に横たわっているのを発見されたが、4日後には56歳の誕生日を迎えるはずだった彼女はすでに事切れていた。

死体の下には焼け焦げた電源タップとヘアードライヤーが転がっていて、誤って電気接触した事故による感電死という印象を与えていた。

しかし、現場へ到着した警察官は、死体が裸足であり、その横に室内履きのスリッパが揃えて置かれていたのに疑問を呈し、台所の外に拭き取られた血痕を見付けたことにより、本当の犯行現場は2階の寝室であると判断したのだった。

2階の寝室にあるカーテンには血痕があり、壁にもいくつかの傷跡が発見された。警察は2階から付白蓮が飛行機のチケットを購入した時の記録を探し出しただけでなく、母親を殺害した後に付白蓮がゴミ箱に捨てた運動靴を証拠として見つけた。

また、警察は付白蓮がスマホで何度となく「傷害保険金の請求はどうするか」という類の言葉を検索していたことを確認した。こうした鉄壁の証拠がそろった段階で、警察は付白蓮を故意殺人の容疑で逮捕したのだった。