photo by iStock

「発達障害」最新レポート その発症メカニズムをゲノム研究で追う

大人と子どもで違いはあるのか

ADHDとASDは併存する

発達障害は、2013年のアメリカ精神医学会の診断基準の改定(DSM5)を受けて、大きな変化のただ中にあります。発達障害とは、一般的に乳児期から幼児期にかけて様々な原因が影響し、発達の遅れや、質的な歪み、機能獲得の困難さが生じる心身の障害を指す概念のことをいいます。こうした発達障害には様々な分類がありましたが、DSM5で「神経発達症」というグループ名に統一されました。

特筆するべき点は、注意欠如多動性障害(ADHD)自閉スペクトラム症(ASD)が併存診断することが認められたことです。ADHDは、不注意、多動(じっとしていられない)、衝動(思いつくと行動してしまう)の3つの課題があります。また、ASDは、社会性(暗黙のルールが分からない)、コミュニケーション(言葉以外に身振りや表情が少ない、会話も内容が過度に細かい、羅列的で焦点が掴みにくい)、こだわり(常同的、反復的行為など)の3つの課題があります。

 

診断基準の改定までは、ADHDとASDは併存しないものとされていました。しかし、臨床の研究の結果、相互に重なりが多く、40~60%程度お互いに重なり合うのではないかと推定されています。分かりやすくいうと、不注意の多い人に、対人関係の問題やこだわりが無いか聞くべきなのと、人間関係の問題がある人に不注意がないか尋ねる必要があるということです。

大人になっても約半数は症状が持続

また、近年、「おとなの発達障害」という言葉が浸透しつつあるように、発達の問題は、成人期まで持続する場合も少なくありません。ADHDの症状は年齢を経るにつれ改善してくるものが多いと考えられていましたが、最近の研究では、児童期の約半数が成人期に課題を残すことが知られています。ASDでも成人期まで症状が持続したり、機能上の課題を持ちます。このため軽症の症状を持つものでは、成人期に至って初めて神経発達症と診断されることも増えてきました。

photo by iStock

たとえば、Aさんは大学生まで部屋は汚くがさつでしたが、元気で人の良い体育会系男子でした。卒業すると営業職に就き、バリバリ働いていました。しかし、業績が良く、30代半ばで昇進したところで、異変が起きたのです。

管理職になると、数字を細かく扱うことや、計画を立ててもの事を遂行することが多くなりました。彼は、これがとても苦手で、ミスが目立ちはじめました。このため仕事がめっきり上手くできなくなり、抑うつや不眠を主訴に受診しました。職場環境の変化により、発達的な課題が表面化した事例です。