盛り上がればなんでもいい、は違う

劇場に限ったことではない。公共の場所にはいろいろなマナーやルールがある。しかし、その認識、解釈には違いがあり、自分にとっての常識は、決して全世界の常識ではない

例えば、同じ劇場空間でも、掛け声が推奨されるエンターテインメントもあれば、禁じられているものもある。「盛り上がりの方」のルールの線引きは、エンターテインメントの種類によって異なる。なお、演劇でも、劇中で、スマフォでの撮影を、主催者側が許可、推奨しているものもある。劇場や演目によって、ルールやマナーが異なるのは当然のことだと思う。

だからこそ、誰もが心地良く過ごすために、明確なルールの提示や注意喚起は必要ではないだろうか。

まあ、より極端な事例でいえば、ハロウィンで盛り上がりすぎて、他人の車をひっくり返すなど、マナー云々より愚行そのもの。盛り上がるにも限度というものがある。

渋谷のハロウィンには警察が出動し、マナーを呼び掛けるようになった。観劇とは異なるが、「盛り上がるためにはルールを守ろうね」ということだ Photo by Getty Images

劇場など、不特定多数の人が数時間を共有する「舞台空間」では、とくにその限度が曖昧であり、より一層「盛り上がっても線は引こう」「その空間でのルールを守る」ことが大切になってくるのだろう。

鴻上さんは「観客が夢中になる舞台を作りたい」ということを意図していたのだと思う。しかし、舞台に夢中になること=前のめりでの観劇であるとは私は思わないし、夢中になったが故に、視界を遮られる憂き目にあう観客を守るために、あのアナウンスがあるのだ。

なお、鴻上さんのツイートを受けての、全国の劇場・ホールや映画館、スタジアムなど公共施設のイスを製造・販売している「コトブキシーティング」のツイートが非常に興味深かったので、最後にその一部を紹介したい。

(客席イスの設計は、どのフロアの席であっても、イス背もたれに背中を預けての鑑賞を想定し設計しています。見やすさももちろんですが、体圧分散や身体への負担のかかり方という面で、1番適切な座り方が「背もたれに背中を預ける」なのです…)

ご指摘のように、1列ごとにイスを半分ズラす千鳥配置の方が、縦1列で真っ直ぐに並んでいるより見やすいとされます。しかし千鳥配置は、劇場全体に配置できる席数が減ります。ですので、千鳥配置は「売上を減らしてでも舞台をしっかりと見て欲しい」という、劇場の心意気の現れでもあります(´-`)

コトブキシーティングTwitterより
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そんなわけで、気持ちは前のめりでも、ぜひ背もたれには背をつけて観劇し、生の舞台というすばらしいエンタテイメントを、客席一体となって、夢中になって、空間ごと楽しみたいと心から思うのだ。