エジプトの血を引く兄弟が「純日本産ウォッカ」づくりに賭ける理由

実は巨大な市場が広がっている
松岡 久蔵 プロフィール

二人は着々と実績を伸ばし、現在では年間およそ2万本を売り上げるまでに成長した。国内では東京だけでなく、大阪、名古屋、沖縄、札幌でも販売店を持つ。さらに海外へも、香港、オーストリア、アメリカへの出荷も数千~数万本単位で確定している。

テキーラの代表選手であるクエルボや、イェーガーの数十万本に比べればまだまだ少ないが、「メジャーブランドでも、市場に浸透するのに何十年もかかったのだから、根気よく続けるしかない」と、販路拡大に努めている。当面は年間6万本の販売を目指すという。

 

国籍なんて関係ないから

漫画、アニメ、漢字、和食と、「日本にしかないもの」を前面に打ち出す方針は、たしかに効率がいいのかもしれない。しかし、それだけが「日本の魅力」を伝える戦略でいいのだろうか? アリーさんはこう話す。

「クラブでお酒を注文する時に、別にそのお酒がどこの国のものかなんて、とりあえず気にしないですよね。まず『おいしい』と感じてから、どこのお酒か気になるのが普通だと思います。

私もオサマもサッカーという実力勝負の分野に身を置いてきましたから、勝てるかどうか、頼りになるかどうかが最も評価されるべきだと思っています。テニスの錦織圭選手や大阪なおみ選手、野球のダルビッシュ有選手、大谷翔平選手も、日本人だからではなく、アスリートとして優れているから世界的に活躍し、人気を集めているわけです。

それはお酒や食の分野だって同じ。日本の酒造の力強さは、『日本風』のマーケティングにこだわらなくても、十分通用すると私は思っています」

いまだに、日本人は内向的で自己主張が苦手と評価されることが少なくない。ビジネスの面で言えば、1億2000万人という巨大な国内市場のおかげで、それでもやってこれた。

しかし、いつまでもそのような恵まれた環境が続くとは限らない。エジプトの血を引く元Jリーガーという、日本社会からみれば異色の起業家兄弟だからこそ、「メイド・イン・ジャパン」「クールジャパン」の強みと弱みをフラットな視点から把握できるのかもしれない。ふたりの挑戦が、大手の支配する酒造業界に風穴を開けることを期待したい。