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iPhoneの脅威を前に、瀕死の会社を「大復活」させた男の全告白

NOKIA(ノキア)会長が答えた

フィンランドの通信機器大手・NOKIA(ノキア)は、いまから7年前、「死に体」となっていた。世界の携帯電話の過半シェアを握るグローバルトップ企業のまさかの転落――。そんな瀕死のノキアをV字回復に導いたのがリスト・シラスマ会長だ。このほどそんなシラスマ氏が上梓した『NOKIA 復活の軌跡』(原題『Transforming NOKIA』)には、ノキアが低迷するなか解決策を見いだせないでいる大企業のジレンマが生々しく記されている。

出版を機に来日したシラスマ氏に立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏が直撃。ノキアはいかに大企業のジレンマを乗り切り、ライバルとして台頭してきたiPhoneの脅威から大復活を遂げることができたのか――。

フィンランド大使館でインタビューに応じたシラスマ氏。ノキアが陥った危機、そして復活への軌跡を赤裸々に明かした

カリスマ経営者への直談判

ノキアが携帯事業で「北欧の巨人」の名声をほしいままにしていた08年当時、シラスマ氏はすでに迫りくるアップル「iPhone」の脅威を見抜いていた。それまで世界のスマホ市場の過半のシェアを誇っていたノキアにとって、その後のiPhoneのシェア浸食は決定的な痛打となっていたのだ。

しかも「iPhone」はノキアと違い、携帯事業の新規参入者。通信キャリアとのしがらみにがんじがらめとなったノキアが開発に苦しむ中、次々と独自のルールを作り出していった。ノキアの衰亡は決定的となりつつあった。

 

シラスマ氏は創業したセキュリティ会社・エフセキュアの会長を兼務しながら08年にノキアの取締役に就任したが、そこで見たのは改革の道筋を見いだせない大組織の姿だった。シラスマ氏の著書には衰退をリアルタイムで目の当たりにしながら、全容を把握できずにもがく生々しい記述がある。当時のシラスマ氏の危機感が伝わってくるので、紹介しよう。

<ノキアの年間計画サイクルは秋に始まる。2009年9月の予測では、2009年上半期の販売数量は緩やかに伸びるはずだった。11月の売り上げデータが出てくると、それをふまえて同時期の予想は8%の伸びに留まることになり、12月の売り上げデータが出てくると、前年比15%減に修正された。毎月、残念な結果が続き、経営幹部はさらなる削減策を打つことになった><市場が変化すると、たいていその変化は過小評価される。最終的にいくつかの手を打つのだが、その都度、以前よりも厳しい状況になっていく。それでもなお、まだ足りていないという感覚が残る。どれほど速く走っても地平線は常にはるかかなたにあり、手が届きそうで届かないのだ>……(『NOKIA 復活の軌跡』より)

業を煮やしたシラスマ氏は、ノキアのヨルマ・オッリラCEO(最高経営責任者)に直談判する。オッリラCEOは当時トヨタ、ウォルト・ディズニー、マクドナルドを凌ぐ世界ブランドのノキアを牽引していたカリスマ経営者である。

直談判の場は、ノキアハウスの8階にある専用会議室での昼食会。暖炉が供えられ、湾岸の見事な景色を一望する大きな窓。「権力の象徴が完備されていた」というその部屋で、ウェイターたちが配膳する料理を前に、シラスマ氏は「どうもうまくいっていないように感じます」と切り出したという。