Photo by gettyimages

ノーベル賞・本庶佑が語る、我々の寿命を延ばした「あるシステム」

がん治療のパラダイムが移り変わる
ノーベル賞の発表が続いています。2018年のノーベル医学・生理学賞は本庶佑(ほんじょ・たすく)氏が受賞しましたが、続く日本人受賞者は現れるのでしょうか。
本記事では、2019年3月17日にパシフィコ横浜で開かれた「ノーベル・プライズ・ダイアログ東京2019」における、本庶氏の講演「獲得免疫の驚くべき幸運」の模様をお伝えします。

がん治療のパラダイムシフトはもう目前

私たちは1992年に「PD-1」(T細胞と呼ばれる免疫細胞の表面にある分子)を特定しました。

その後の研究で、PD-1は免疫システムのブレーキの機能を持ち、これが欠損している動物はさまざまな疾病にかかるということが分かりました。

一方で、がん細胞はこの抑制機能をうまく利用してがん細胞自身を攻撃しないようにしているので、この発見を基にPD-1をがんの治療に使えないかと考え始めました。

企業と医薬品を共同開発した結果、免疫療法のニボルマブ(抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品)は、典型的な化学療法として使われているダカルバジン(抗がん剤)と比べて、メラノーマ(悪性黒色腫)の患者に対して明確な治療効果上の違いを示しました。

その後、ニボルマブは、アメリカ食品医薬品局(FDA)や日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)など、世界中で12を超えるがんの免疫療法の医薬品として承認されております。

この薬はがん治療のパラダイムシフトを起こすと考えられています。

それは理論上は健康な細胞に対する影響がないために副作用が少ないこと、さまざまな種類のがんに効くこと、その治療をやめても長期にわたって有効であることが理由です。

抗PD-1抗体による治療が有効だった患者さんは、治療をやめた後もがんを再発しませんでした。その患者さんは5年以上の生存が記録されています。

この治療法はなぜこれほど有効なのでしょうか?

がんと「共存」できる将来を

がん細胞は常に変異しています。

化学療法の場合、薬剤に対する抵抗力を持つようになり、薬が効きにくくなります。