世界的に犯罪が少ない日本の知られざる「更生保護のリアル」

やり直しのできる社会を目指して
廣末 登 プロフィール

保護観察所就労支援担当統括官の話

罪を犯した人の就労支援は、対象者の様々な特性を考慮し、保護観察所の就労支援チームによって社会復帰計画が立てられる。

いわば就労支援着手にあたる部門であるが、ここの実務を掌握する統括観察官に、福岡県の更生保護の現状と課題について尋ねてみた。

福岡県は、更生保護では全国でも意識は高く、保護司、協力雇用主の数も多い。ただ、そうはいっても、更生保護制度充実のためには、現状に満足することなく、横の連携強化という課題がある。

様々な対象者に関する困りごと、相談すべき事項が、協力雇用主や保護司、そして主任観察官に共有されることで、各対象者にマッチした社会復帰計画を立てることが可能となり、問題解決のヒントが生まれる。

地域が一体となり、そこに暮らす我々が利他の心を持ち、排除しない社会を推進することが、安心・安全な社会の礎になると確信し、我々観察官は日々の業務に取り組んでいる。

 

過去に140人以上の刑余者を雇用した協力雇用主の話

つぎに、観察所から保護観察対象者等を引き受け、就労を通して社会性や規則正しい生活を教導する協力雇用主の話を聞いた。

野口石油のオーナーである野口義弘氏は、過去25年間、北九州市内3ヵ所のガソリンスタンドで140人以上の少年や保護観察対象者を雇用してきた。

私の事業所はガソリンスタンドだが、警察サポートセンターや、保護観察所付添人(弁護士)から紹介された対象者を面接したら必ず雇用してきたし、解雇はしない。

関わった非行少年が補導されたら、彼らには帰る場所がある、更生のための「受け皿がある」ということを示すために、雇用証明書を家庭裁判所の調査官に提出している。

更生の鍵となることは、立ち直ろうとしている非行少年に、居場所や仕事を与えることに加え、大人が愛情を注ぐことである。

彼らを見守りながら仕事をしてもらい、仕事を通してチームワークや責任感など、家庭で教わることがなかった社会性を身に付けてもらう。慣習的な職業社会で仕事を続けるための基礎力を培う機会を、協力雇用主は非行少年に与えなくてはならない。

これまでに、少年から大人まで140人以上の対象者と関わってきた。これほど多くの方々の更生に携われたのは、北九州市という行政のバックアップのお陰である。

北九州市が雇用主幹事会を牽引し「協力雇用主就労支援ハンドブック」を作成し、協力雇用主の役割や必要性など、地域社会への周知に尽力している。

北九州方式ともいえる行政、民間の垣根を越えた取り組みが、福岡県の「子どもや若者の健やかな成長や自立を支える環境づくり」機運の高まりを促進させ、協力雇用主の増加のみならず、地域社会の理解に結実した。