photo by gettyimages

米朝電撃首脳会談「実現までの5時間」に何が起こったのか

再選への黄色信号が彼を動かした

ナンバー2にすら知らされていなかった

「日本経済新聞」一面左下の名物コラム「春秋」は、毎朝、必ず目を通す。7月2日付の同コラムに記述された「ツイートは踊る」には合点がいった。

6月30日夕、朝鮮半島を南北に分断する非武装地帯(DMZ)内にある板門店で行われたドナルド・トランプ大統領と金正恩労働党委員長の米朝電撃首脳会談は正真正銘のサプライズであり、全世界に衝撃を与えた。

事前に米朝間で準備されていた「演出」である、との指摘は承知している。ホワイトハウスは主要20ヵ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)開催前の6月15日、トランプ大統領が同会議終了後に韓国を訪問すると発表した。

 

その直後から「米朝首脳板門店会談」説が一部消息筋の間で取り沙汰されていた。だが、今回のトランプ・金正恩会談は、19世紀初頭の「ナポレオン戦争後の欧州の国際秩序の回復を目指し開いた『ウィーン会議』を描いた名画『会議は踊る』」(「春秋」)に続く「ツイートは踊る」という表現が正鵠を射ている。

筆者が取材した限りでも、外務省がカウンターパ-トである米国務省から事前通告を受けていなかっただけでなく、同省ナンバー2のジョン・サリバン国務副長官以下、デビッド・スティルウェル国務次官補(東アジア太平洋担当)、ハリー・ハリス駐韓大使までが知らされていなかったのは事実である。

「握手してハローを言いたい」

ソウル入りした当日の29日午前8時頃、トランプ大統領はツイッターで「もし金委員長がこれを見ていれば、私はDMZを訪れるが、そこであなたと握手してハローを言いたい」と呼びかけた。その後の北朝鮮側の反応が早かった。今や金委員長の対米交渉チームの中核メンバーの崔善姫第1外務次官がその5時間後に朝鮮中央通信社を通じて「非常に興味深い提案である」との談話を発表した。異例の速さだった。

その後、米朝双方の誰がいつ、2018年6月に設置されたホットラインで米朝首脳接触に同意したのか確認できていないが、その日の夜、板門店の韓国側施設「自由の家」で米韓合同作業による首脳会談場の米朝両国旗、椅子、テーブルの準備から内装などロジスティック面の突貫工事が行われたことからも、同日夕方までに会談実現で合意したのは事実である。兆しはあった。5月10日と23日の米朝両首脳の親書交換である。

大統領専用機でトランプ氏に同行・来日したスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表が前日に大阪からソウルへ先乗りしていたことからも、同氏が件の崔女史と最終確認を行ったのはほぼ間違いない。

そうだとしても、米朝首脳会談実現のトリガー(引き金)となったのはトランプ大統領のツイッターである。