被害はストーカー行為だけじゃない

詳細は拙著を読んでいただきたいので省くけれども、最初の炎上の後で逮捕となったものの、加害者と示談を成立させて不起訴、釈放となって、4ヵ月後に私が新刊を出したのを見かけて平然と示談を破ってまた嫌がらせをしてきた。けれども、示談を成立させた弁護士、加害者を逮捕した警察、不起訴にした検事とすべてに助けを求めたのだが、誰一人動いてくれなくなったのだ。

助けてくれるはずと思い込んでいた警察や検察などすべての組織が、制度が、法律が、場合によっては自分の安全を保障してくれるものではなくなることに、愕然とした。こちらは加害者からの攻撃に怯え、住んでいた家から避難生活を経て、別の家に隠れるように引っ越し、行き先をだれにも告げず、移住後に築いてきた社会的なつながりまで断っていた。

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仕事にも多大なる影響を及ぼした。QOLはダダ下がりだが、世間からも相談に行った警察からも、ストーカーに追われていたら逃げて「当然」と扱われる。

ストーカー被害とは、大量のメッセージ送信や嫌がらせや付きまといなどのストーキング行為そのものだけではなく、加害者を取り締まる制度の手続きの齟齬に疲弊したり、被害者の生活環境や仕事まで奪われてしまうことも含まれるのだ。自分が被害に遭うまでまったく想像もつかなかった。これは世の中に知られた方がいいのではないか。

また、私が受けた被害のほとんどが、インターネットを介した書き込みやメッセージだった。加害者にはある程度社会に名が出ている私のプライベートを暴露して困らせてやろうという思惑があったのは明白だ。今後ストーカー被害をなかったことにして身辺のエッセイを書けば書くほど、加害者は暴露したい気持ちに駆られるのではないか。被害のあらましを自分から晒してしまえば、暴露されて困ることもなくなるのではとも思った。

とはいえ、返って逆上させる可能性もある。世間の噂も気にならないわけでもないし、こういうことは黙って受け流すのが「賢いやりかた」と考えている人も多い。辛いことに遭ったことを口にすること自体、日本の社会では好まれない。加害者の怒りを買うだけでなく、世間からも疎まれ蔑まれる可能性だってある。