安倍首相「沖縄の基地を減らすことに尽力すべき」と発言した過去

「アンチ・リベラル」という姿勢
中島 岳志 プロフィール

政治家は結果責任をとることで免罪される

安倍さんが繰り返し語る思い出話に、祖父・岸信介とのエピソードがあります。

60年安保当時、首相だった祖父に馬乗りになりながら、デモ隊のまねをして「アンポハンターイ」と言うと、父・安倍晋太郎に叱られたというエピソードはよく知られています。

私が注目したいのは、岸が安保条約を通すために、安保条約に厳しい態度をとっていた大野伴睦の賛成を得ようとして「次の政権を大野氏に譲る」という趣旨の念書を書いたという話です。この点について、親族のひとりが岸に尋ねたところ、「たしか、書いたなあ」と答えたといいます。しかし、大野への首相禅譲はなされませんでした。要は約束を反故にしたのです。

親族が「それはひどいんじゃないの」と言うと、「ひどいかもしれないが、あの念書を書かなければ安保条約はどうなっていたかな」と言ったといいます(『この国を守る決意』)。

このエピソードを踏まえて、安倍さんは次のように言います。

 
私はその後、読んだマックス・ウェーバーの『職業としての政治』で、「祖父の決断はやむを得なかった」との結論に至りました。祖父の判断は、心情倫理としては問題があります。しかし、責任倫理としては、「吉田安全保障条約を改定する」という課題を見事に成就しています。とくに政治家は、結果責任が問われます。政治家は、国益を損なうことなく、そのせめぎ合いのなかでどう決断を下していくか―ということだろうと思います。(前掲書)

このエピソードは『「保守革命」宣言』でも述べられており、安倍晋三という政治家の重要な指針になっているようです。

首相在任中の安倍さんの言葉については、その場しのぎのごまかしや不誠実さが目立つと指摘されます。しかし、安倍首相は動じていないでしょう。彼は祖父・岸信介の態度を継承しながら、心情倫理として問題があっても、結果責任をとることで免罪されると考えているのですから。

安倍首相の行動原理の「根」の部分には、岸の政治姿勢の継承という側面があると言えます。