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腰痛治療に朗報、「新ガイドライン」が示すこと

「心療整形外科」を始めた医師が説く 第5回

「腰痛の85%は原因がわからない」はずが・・・・・・

「腰痛診療ガイドライン」がこのほど、7年ぶりに改訂され第2版が出ました。

ガイドラインは、医者によってあいまいな診断をなくして「どこの医者へ行っても同じ診断をされ、同じ治療がうけられる」ことを目的に、この15年の間に急速に整備されてきました。

現在ではすべての診療科を合わせると400をこえるガイドラインがあります。

 

整形外科の分野では、腰に関するものだけでも、腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン、腰痛診療ガイドラインなどがあり、患者さんもみられるように書籍になっており、一部はインターネットで公開されています。

腰痛にお悩みの読者の中には、「腰痛の85%は実は整形外科医にも原因がわからない」という話を読んだり聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。

腰痛は日本人の4人に一人、2800万人が悩んでいる現代の国民病です。ところが、腰痛で整形外科に行ってレントゲンを撮っても「大きな異常はないので、心配ありません。しばらく様子をみてください」とか「加齢に関係しているので、うまくつきあっていきましょう」といわれることが多いはずです。

腰痛が急性でも慢性でも、患者さんが一番心配なのは「自分の腰痛は何が原因なのか? これからどうなっていくのか? どんな治療が一番いいのか?」ということ。ところがこの心配にはっきりと答えられる整形外科医はほとんどいません。

だから、医者は「様子をみましょう」だとか「とりあえず痛み止めの薬をお出ししておきます」としか言えないのです。

これは別に私個人の見解ではなくて、2012年に出た最初の腰痛診療ガイドラインに、腰痛の85%は「非特異的腰痛」という、原因がはっきり診断できない腰痛であると書かれていたのです。非特異的腰痛は「病理解剖学的な診断を正確に行うことは困難な腰痛」と定義されていました。

レントゲンやMRIで「正確に」「病理解剖学的に」診断できる腰痛は、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎圧迫骨折などです。これらがだいたい15%。それ以外はすべて非特異的腰痛となってしまったのです。

しかし非特異的腰痛でも、診察で「原因がほぼわかる」腰痛はたくさんあります。

「75%の腰痛は原因がわかる」になったが……

ガイドライン出版当初から多くの整形外科医から異論が出て、さまざまな議論が沸き起こりました。たしかに「はっきりわからない」のは8割以上かもしれないけれど、「だいたいわかる」のは逆に80%以上あるのではないか。「全然わからないのは1割以下」と主張する整形外科医もいました。

新しいガイドラインでは、「腰痛の原因」に関して、どう変わったのでしょうか?

 

腰痛の原因として、狭窄症、椎間板ヘルニア、仙腸関節性、筋・筋膜性、椎間板性などの原因があげられ、これらの原因が腰痛の75%を占め診断可能である、と書かれています。

たった7年で、腰痛の「85%が原因がはっきりわからない」から「75%が診断可能」になったのです。

しかしこれらの腰痛は、レントゲンやMRIを撮っても「これが原因だ」と確定できる所見はありません。つまり病理解剖学的に正確に診断することができない点ではあまり変わっていません。

新ガイドラインでは、初版の「85%の非特異的腰痛」について「腰痛の確実な診断と治療が必ずしも容易でないことを紹介したものであり、一般国民への教育的効果があった」としています。

やや上から目線の「言い訳」をしつつ、「いずれにせよ、腰痛の85%が非特異的腰痛である、という根拠は再考する必要がある」と少々混乱した書き方をしており、やはりこの件、大きな問題となって反響も甚大だったことを伺わせます。

腰痛の原因は完璧に科学的に証明されなくても、医者の経験から総合的に判断できるものであり、その診断が患者さんにも納得できるものであればよいのです。

だから患者さんも、腰痛の診断はこういうものであるということを理解して、レントゲンやMRIの結果だけに振り回されないよう心がけることが大切です。