ビットコインの創始者「サトシ・ナカモト」という虚像の正体

静かに消えてしまったほうがいい
上田 岳弘, マルク カルプレス

「たった1社」が世界中に大きな影響を与えうる時代

マルク そうですね。あとは、その仮想通貨が支持されるか否かにかかっています。生物と同じく仮想通貨もどんどん自然淘汰が進んでいく。どれが一番良い形なのかは時間が経って初めてわかることです。

上田 いずれにせよ、ビットコインと国を対比するのは非常に正しいことだと思うんです。国家の力の源泉には、お金を刷る力も含まれているじゃないですか。例えば、国家を維持するために必要な通貨発行コストと、仮想通貨の維持に必要なコストを対比させてみても興味深いですよね。

マルク 今後の技術の発展によっては、仮想通貨の維持コストのほうが安いという結果も出るかもしれません。それに通貨に対する国の考え方自体が変わることもあり得ます。時代とともに通貨の形は変わってきたので、通貨体制の次のシステムが登場してもおかしくはありません。

上田 ここ最近では、国際経済的にメインプレーヤーではない国の人たちが、ビットコインなどの仮想通貨を検索することが増加しているようです。ハードカレンシーにはまだまだ勝てないにせよ、すでに列強ではない国の通貨に比べて、信用度が高いという状態になっている気がします。

マルク ハイパーインフレに陥ったジンバブエのような国なら使える可能性があるでしょう。ただし、発行権がどこに帰属するかが大きな問題です。もし国の通貨が仮想通貨になったとしても、結局は発行主が信頼できないと、本質はハードカレンシーと変わらないかもしれません。

 

上田 今やたった1社のビジネスが世界中に大きな影響を与えうる時代じゃないですか。それが同時に世界を構成する個人にも影響を与えていることは明確です。例えば、フェイスブックやツイッターがきっかけで結婚したケースなどいるでしょう。

マルク ひとつの会社が個人の人生そのものを変えているということですよね。

上田 世界の成り立ちと個々人の出来事がリンクしているのが神話なので、そういう意味で現代はそれにすごく近くなっているような気がしています。

マルク 1社が世界をコントロールできてしまうことはすごいことだと同時に、まずいことでもあります。クラウドサービスの分野では、アマゾン、グーグル、マイクロソフトが競争をしていて、なかでもアマゾンが一番大きなシェアを占めています。言い換えれば、もしアマゾンで不具合が起こった場合、インターネットの半分くらいが止まってしまう状況だということです。