ビットコインの創始者「サトシ・ナカモト」という虚像の正体

静かに消えてしまったほうがいい
上田 岳弘, マルク カルプレス

仮想通貨は「ソースコード」と「哲学」でできている

上田 お金に困ってビットコインを売ったりしないのかなって、ときどき思います。

マルク 彼は100万BTC以上を所有しています。もし正体がバレたら、彼を襲ってまでそのビットコインを奪おうとする人間が必ず現れるでしょう。いわば下手な行動によって人生が危険にさらされるかもしれない状況です。今は毎日が精一杯なんじゃないかと思います。

上田 まだ生きているんでしょうか。

マルク 生きていると思いますよ(笑)。

 

上田 彼には名乗り出てきてほしくないですね。匿名のままのほうが面白いし、たぶん何もしないほうがいい。静かに消えてしまったほうが、混乱も起きずにみんなのためになる気がします。

マルク 同感です。やはり人々が作り出した伝説に耐えうる人間はいないと思うので。

上田 サトシ・ナカモトという虚像はでかいですよね。

マルク 上田さんのご著作には「仮想通貨はソースコードと哲学でできている」という一文があります。仮想通貨の説明としてとても分かりやすくて、私も思わず唸ってしまいました。

上田 最近は、仮想通貨って本来の富の形に近づいた形かもしれないとも感じているんです。元をたどると通貨って富に対するアクセスパスでしょう。富そのものは形がない状態で原始時代からあったと思うんですよ。それを多くの人間のあいだでやり取りできるように、貝殻などから始まり、金本位体制を経て、現在の国家がその価値を保証する管理通貨体制になっていった。本来の富の形がクラウド的なものだとするならば、無形だけれど価値のある仮想通貨は富の本質的な形と似ているんじゃないでしょうか。

ただ、マルクさんがご著作で指摘されているように、仮想通貨の一番のネックはシステムの維持、つまりマイニングにかかる電気代です。スウェーデンの年間消費電力量と同じくらいの電力がマイニングに使われているようですが、そこの兼ね合いがうまくいけばもっと発展するはずだと感じています。

マルク ビットコインに参加するみんなが同意すれば、新たなシステムを導入することは可能です。ただ、マイニングにおいては中国が支配的で、彼らの利益にならない以上は同意に至らない可能性が高い。そうなるとビットコインからビットコインキャッシュが生まれたように、ハードフォークせざるを得ないかもしれないですね。

上田 あるいは究極の仮想通貨がビットコイン以外から誕生するようなイメージでしょうか。