ビットコインの創始者「サトシ・ナカモト」という虚像の正体

静かに消えてしまったほうがいい
上田 岳弘, マルク カルプレス

サトシ・ナカモトが「ちょっとやめてほしい」と

上田 マルクさんにすごく聞きたかったのが、ビットコインの提唱者サトシ・ナカモトについてです。日本人の名前になっていますが、日本人の僕からすると不思議な感じがするんですよ。なぜ日本人の名前を選んだんだろうって。

マルク あくまで仮説ですが、日本が好きだったからじゃないでしょうか。やはり日本の文化は海外から人気があって、特に漫画やアニメは世界的な影響力を持っています。日本に憧れる気持ちもわからなくはありません。

上田 僕にとっては、サトシ・ナカモトの存在が執筆のきかっけになっています。確かビットコインの時価総額が10兆円を超えたくらいに作品を書き始めたんですよ。10兆円というと日本の国家予算の10分の1です。しかも、その提唱者の名前が日本人名っていう部分にすごく惹かれたんです。

なにより謎めいた人物の名前が日本名というのは日本人作家としてはすごくおいしい。『ニムロッド』では日本人の中本哲史が、仕事としてビットコインをマイニングするという設定になっていますが、それを自然に書けるのはやっぱり日本人作家だけ。これはある意味早い者勝ちだろうと思って、僕も書いたところがありました。

マルク もはや彼は伝説的な存在になっています。今でこそ一切表舞台には登場しませんが、ビットコインができたばかりの頃は技術者たちに指導をすることもありました。

上田 その時はまだサトシ・ナカモトとコミュニケーションが取れたんですか。

 

マルク そうです。ちょっと支配者的なところもありましたよ。ビットコインを支えているソフトの仕様が少し分かりづらかったので、僕がゼロから綺麗なものを作ろうと提案したことがありました。そしたら、サトシが「それはちょっとやめてほしい」と言ってきたりとかね。

上田 彼についてはいろいろな説があって、なかには複数人説もあるじゃないですか。

マルク そこまで複雑ではないと思います。ソースコードやコミュニケーションの過程を見ても一貫性がある。だから複数人が関わっている説は考えづらい。