「商業捕鯨再開」欧米の日本バッシングはなぜ盛り上がらなかったのか

そもそも、捕鯨を取り巻く状況は厳しい
松岡 久蔵 プロフィール

スーパーも取り扱いに慎重

かつてのように全国的に消費を拡大するのは無理としても、産業として採算が合うようにするには、新たな販路の開拓が欠かせない。鯨研は販路拡大を目指し、4月からノルウェーの捕鯨企業の日本法人ミクロブストジャパンに新たに販売を委託し、飲食店向けのネット販売を始めた。このことについて専門紙記者はこう解説する。

「いまさらネット販売か、と思うかもしれませんが、鯨肉の閉じられた商流の中では、新規参入はほぼ不可能でした。卸売・加工業者への連絡手段は電話とFAXしかないという状況で、長野など内陸部で扱おうと思っても不可能だった、という事情があります。そのようなローテクで、鯨肉の販売が増えるはずもありません。

今回、販売委託先となったノルウェー企業の日本法人社長は元鯨研社員。といっても天下りではなく、鯨研の保守的な雰囲気が合わず、販路開拓と鯨肉食の普及を目指して独立したようです。むしろ、そういうやる気のある社員が、外へ飛び出さなければ活動できないところに鯨研の体質が反映されているともいえる。果たして今後、どれだけ伸ばせるか」

さらに、いまのところはスーパーをはじめ大手流通各社も、反捕鯨団体からの抗議を恐れて鯨肉の取り扱いには慎重な姿勢を取っている。販売拡大の前途は多難といえそうだ。

 

捕鯨議連から業者への不満

昨年末の政府によるIWC脱退決定までに、自民党捕鯨議連による長年の働きかけがあったこと、また同議連が動物愛護を主張する欧米諸国に対抗してきた経緯は、筆者の以前の記事でも詳報している(「もう脱退しかないのか?日本が窮地に陥った『国際捕鯨委員会』の内幕」「国際捕鯨委員会脱退を日本政府が決めるまでの全深層」)。

だが、「悲願」を実現した今になって、議連内部では捕鯨業界に対する不満が出始めているという。議連幹部がこう解説する。

「年明け頃から『調査捕鯨の時のような税金のサポートがなくなってしまうと、十分な供給責任を果たせる自信がない』と弱気なことを言う捕鯨業者が出始めて、辟易する幹部も出てきている。

『障壁がなくなったのだから、後は民間でやってくれ』というやり方ができないとなると、サンマやマグロのような他の魚種の業者に対して、説明がつかない。『なぜ、売れもしないクジラだけがいつまでも特別扱いなのか?』と、不満が噴出する事態にもなりかねません。一番の『重石』は我々がどかしたわけだから、そこから先は業者が自分たちでやってほしいのですが」

また、今後いつまで商業捕鯨が続くかについては、全国紙社会部記者がこう指摘する。

「太地町のある和歌山県出身の二階俊博幹事長がいなくなれば、一気にトーンダウンするでしょうね。二階氏は商業捕鯨再開をライフワークにしてきましたが、若い議員はもうそこまで捕鯨に熱心ではない。水産庁も2、3年は補助金を出すでしょうが、そこから先は望み薄でしょう」