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「商業捕鯨再開」欧米の日本バッシングはなぜ盛り上がらなかったのか

そもそも、捕鯨を取り巻く状況は厳しい

今月、商業捕鯨が約31年ぶりに再開された。懸念されていた国際社会からの批判は、日本政府の周到な根回しにより最小限に抑えられたが、問題は鯨肉の需要があるかどうかだ。

かつてのような消費量は到底見込めない上、むしろ今後の業界では、これまでのように、捕鯨再開に取り組む自民議員の力を借りて補助金を受け取ることも難しくなる。皮肉なことに、商業捕鯨の再開によって、捕鯨業界の真価が厳しく問われることになるのだ。

 

「無風の船出」ではあったが…

7月1日、捕鯨基地のある北海道釧路市と山口県下関市で捕鯨船の出港式が開かれた。

商業捕鯨には、下関港を出発して、領海と排他的経済水域(EEZ)内の沖合で数ヵ月間操業する母船式捕鯨と、釧路市や宮城県石巻市などを拠点に日帰りで操業する沿岸捕鯨の二つの方式があり、それぞれの船が操業を開始した。

水産庁が同日発表した捕獲枠は、年内の捕獲上限を227頭、来年以降は383頭とする計画だ。ニタリクジラやミンククジラなど、いずれも「推定される資源量の1%未満」を基準に算出している。

ただ、これまで行っていた調査捕鯨では、南極海で333頭、北西太平洋で304頭、計600頭以上を年間で捕獲していただけに、半分以下になる。同庁によると、「100年間捕獲を継続しても資源に悪影響を与えないとIWC科学委員会が認めた、極めて保守的な基準」という。

追加船舶の増強もなく、淡々と再開された商業捕鯨だが、危惧されていた日本に対する国際的批判は、ごく一部の欧米メディアで取り上げられたのみで「ほぼ無風」の船出となった。

1日の両出港式にはオーストラリアなどから複数の海外メディアも取材に駆けつけたが、取り上げた記事は少なかった。その背景に、捕鯨問題自体が国際的関心を失いつつあること、また日本政府による周到な根回しがあったことについては、以前の記事(「安倍首相が『商業捕鯨再開』のために豪首相を説得した30分間」)ですでに報じた。6月28、29日に大阪市で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議が直前にあったため、捕獲枠の発表をぎりぎりまで伏せていたことも功を奏したようだ。

消費量はかつての「約80分の1」

ついに再開にこぎ着けた商業捕鯨だが、多くの国民は、「いまさらクジラを捕っても、需要がないのではないか?」という疑問を抱いていることだろう。これまでも、調査捕鯨に税金を投入することに対して「無駄遣い」と批判する声は決して小さくなかった。

水産庁の資料などによると、国内の2017年度の鯨肉消費量は約3000トンで、最盛期の1962年度の約23万トンに比べ、約80分の1にまで激減している。30代以下の若年層は、食べたこともないという人が大半だ。現在では、捕鯨文化のある下関市や和歌山県太地町などを除けば、専門店などでしか提供されていない。