高機能フィルムを製造・販売する帝人フィルムソリューションを取材した。原料を変えたり、性質が異なるフィルムを重ねたりすることでフィルムの特性は大きく変わるため、同社製品は各種工業製品の製造工程で使う材料、電気の絶縁、高記録密度磁気テープの原料などあらゆる産業分野で利用されているという。生え抜きで“フィルム業界の生き字引”とも言われる能美慶弘社長(58歳)に聞いた。

収穫量が20%もアップ
機能性フィルムは身近な製品に使われています。
たとえば液晶ディスプレーには特定方向の光だけを通すフィルムが使われていますし、太陽光で動く有名ブランドの腕時計には、文字盤の下にある太陽電池の基板にフィルムが使用されています。
通常、太陽電池はガラス基板の上に発電する物質を塗布して作りますが、腕時計は厚みを抑えるために薄くて割れないフィルムを使うのです。
あとは、缶の表面のラミネート。
缶の表面に塗装をするより、フィルムで覆ったほうが意匠性に優れ、環境にも優しいのです。缶の底が白ければ当社のフィルムが使われているので、見かけたら私たちを思い出していただければうれしいです。
将来は、自動車や電車など大きなものもフィルムでラミネートしていきたいですね。フィルムは本当に様々な場所で使えるのです。

フィルムのニーズは意外な場所にもあります。
たとえば農業用のビニールハウス。ハウスの中は夏場に暑くなりすぎることがあるのですが、ナノレベルの薄さのフィルムを積層していくと、光合成に必要な光線だけを通し、暑さのもとになる赤外線は反射するフィルムを作れるんです。これを使ったビニールハウスで農作物を育てたところ収穫量が10~20%も向上したケースがあるそうで、私も驚きました。