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# 財務省

真っ赤…巨額損失の「ある官民ファンド」がなぜか廃止されない裏事情

国民の血税で…

そもそも組織的に向いていない

なかなかうまくいかない「官民ファンド」に、新たな火種が飛び出した。

財務省は、現時点で約92億円の累積損失を抱えている農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)の取締役ポストへの出向を拒否した。巨額の損失で官庁運営に影響が及ぶのを避けるためだ。また6月14日の財政投融資分科会では、官民ファンドへの監視を強める報告書をまとめた。

財務省による「監視強化」は、毎年のように言われていることだが、そもそも官民ファンド自体が無理なスキームであることは明らかだ。官民ファンドとは産業革新投資機構のように、国の政策に基づいて、政府と民間が共同で、主に投資を行うものだ。

 

官では株式投資ができない。それを無理やりやろうとして民を連れてきたのが官民ファンドの成り立ちだが、率直に言えば廃止するべきだ。そもそも霞が関の役人に株式投資のノウハウがある人間は皆無と言ってよい。

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また、原資となる公的資金は一定の手続きが必要で、スピーディーな出し入れが難しい。即断即決が求められる株式運用には向いていない仕組みだ。

仮に官民ファンドを設け、民間から優秀な投資家やストラテジストを引っ張ってきたとしても、後者の、手続きに時間がかかるという組織構造的なネックは解消できない。

昨年4月、会計検査院でも官民ファンド全般の運営状況の報告をしている。官民ファンド運営法人16法人に対して行われた政府出資等の額は8000億円程度だ。'12~'16年のバランスシートが掲載されている13法人について見ると、赤字を垂れ流し続ける産業革新投資機構ほどではないが、11法人について出資金が欠けている状態だ。

しかし、ひとたび官民ファンドができると、役人にとっては恰好の天下り先になるため、なかなか廃止されない。例えば、産業革新投資機構についても、前身の産業革新機構を時限措置としていたのに、看板掛け替えで経産官僚が機構を温存し続けたい思いが見え見えだ。

最初から官民ファンドが失敗すると分かっていた人間からしたら、こうした無理筋に連なる官僚も民間人も、「スケベ心」満載の存在にしか見えない。

 

政策としての「官民ファンド」を、国際的な視野で考えてみよう。官民ファンドの前提には、官で産業を育成する「産業政策」があるが、それに対応する英語が見つからない。industrial policy という人もいるが、ほとんどその前に Japanese と付ける必要がある。つまり、日本独特のもので、諸外国で同様の例を探すことは困難だ。

海外の経済政策の専門家たちに言わせてみれば、そもそも立場上、政府が育成すべきターゲット産業を見つけることなどできるわけがない。日本の産業政策は政治家・役人への利益誘導ではないかともいぶかしんでいる。

以上のことを踏まえ、改めて大原則を確認すると、官が行うべき仕事は、民ができないものに限る。その中でも損失が発生する確率が低いもの、つまり安全なものに限定される。リスクは民間のほうが取りやすいので、巨額の損失リスクがある投資に官が手を出すべきではない。餅は餅屋、自分に向いた仕事に専念したほうが、官民どちらも幸せになれるだろう。

『週刊現代』2019年7月6日号より

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