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「闇営業」芸人とメディアに伝えたい「オレオレ詐欺」被害者家族のホンネ

謝罪よりも必要なことがあるはずだ
竹内 謙礼 プロフィール

芸人だからこそ、できること

もうひとつ言わせてもらえれば、謹慎処分を受けている芸人のみなさんには、謹慎期間中、全国を回って特殊詐欺撲滅のライブ活動をやってもらいたいという思いが強い。家でじっとしているぐらいなら、全国の小さな町や村に出向いて、特殊詐欺の注意喚起になる漫才やコントを披露してもらったほうが、よほど謹慎期間に相応しい過ごし方だと思う。

私も母親がオレオレ詐欺の被害者になった際、真っ先に考えたのは、これ以上、被害者を増やさないという強い思いだった。オレオレ詐欺の場合、被害にあった金額よりも、騙されたことによる自信喪失による精神的ダメージのほうが大きい。しかし、お年寄りは被害にあった内容をうまく言葉で表現することができないし、情報を拡散する術も知らない。そうなれば、騙された悔しさを晴らすことができるのは、身の回りにいる家族しかいない。

だから、私は母に代わって被害にあった内容をブログで書き綴り、SEOを施して『オレオレ詐欺 被害者』のキーワードでGoogleの検索結果で上位表示を狙うことにした。

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その結果、テレビ局や新聞社のリサーチャーの目に留まるようになり、多くのメディアの取材を受けるようになった。おそらく2年間で20社ぐらいの取材を受けたと思う(今現在はGoogleのアルゴリズムが変わって私のブログは圏外になってしまっているが)。

しかし、所詮は素人なので情報の拡散力は弱く、高齢者に対して特殊詐欺の警戒心を強められるまでには至らなかった。それ故に、今回は芸人のみなさんが特殊詐欺の恐ろしさを身近に感じた今だからこそ、全国を回って、お年寄りに特殊詐欺の防止策を講じるライブ活動をしてもらいたいという思いがある。

警察や市が主宰する特殊詐欺撲滅のイベントだと、コンテンツが面白くないので人が集まりにくい。仮に集まったとしても、構成作家は素人だし、話す方も素人なので、注意すら喚起できずに終わってしまう。

しかし、これがプロの芸人ならどうだろうか。笑いを混ぜて、人の注意を引いて話すことに関しては、プロの芸人のほうが一枚も二枚も上手である。本職の構成マンや作家さんがついて、さらにプロの芸人が面白おかしく特殊詐欺の注意を喚起する漫才やコントを披露することができれば、今までにないぐらいの特殊詐欺の防止策に繋がると言える。

謹慎処分を受けた芸人ならスケジュールもがら空きだし、人数も多いので吉本新喜劇以上の面白い一座になるかもしれない。マスコミも大挙して取材に押し寄せてくれるので、メディアの露出も高まり、より一層、全国の高齢者に対して特殊詐欺の注意を喚起することができるはずである。

家族がオレオレ詐欺の被害者になったからこそ言える話だが、被害にあった高齢者というのは何日も笑顔が戻ってこない。悔しくて夜も眠れず、詐欺に騙された自分を責め続けて、数ヵ月間、気持ちが晴れない状況が続く。取材を受けた新聞記者から聞いた話だが、オレオレ詐欺の被害にあった高齢者の中には、自分が被害にあったことを誰にも言えず、自殺してしまう人も少なくないそうだ。

しかし、詐欺に騙された人同士で話をしたり、自分が詐欺にあったことを人に話をしたりしていくうちに、少しずつ出来事が客観視できるようになって、気持ちが紛れていく。実際、私のブログ経由で母親にも取材がくるようになったのだが、メディアの取材を受けていくうちに、少しずつ元気を取り戻していったところがあった。

今回も、特殊詐欺に巻き込まれた芸人たちが、特殊詐欺にあったお年寄りたちと出会うことで、本来の元気を取り戻すことに繋がっていけば、これほど被害を受けた家族としては嬉しいことはない。