インテリアや雑貨などの北欧ブームにはじまり、最近ではお手本にしたいライフスタイルでも注目されている北欧・スウェーデン。日本と比べると、社会福祉制度、消費税率など、さまざまな点で国の背景が違うことをご存知の方も多いかもしれないが、北欧輸入の第一人者であり、北欧ブームの礎を築いてきた芳子ビューエルさんは、仕事への向き合い方にも大きな違いがあるという。

インタビュー・文/長嶺葉月

北欧のライフスタイルが
定着しない日本人の声に直面

ビューエルさんが日本と北欧を行き来する中で、デンマークやスウェーデンの豊かなカルチャーを日本に紹介してきた理由、そして北欧で大切にされている文化について尋ねた。

「学生時代からカナダに8年半、その後、JETRO(日本貿易振興機構)の仕事で北欧諸国に住んでいました。北欧のワークスタイルにより深く注目するきっかけとなったのは、以前出版した『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』(大和書房刊)で、『Hygee(ヒュッゲ)』を紹介するにあたり、デンマークの労働環境を知ったことから。

写真/『fika(フィーカ)世界一幸せな北欧の休み方・働き方』より

北欧諸国は、手厚い社会保障によって老後の心配が少ないとはいえ、消費税が25%と物価が高く、外食や旅行などを頻繁にすることは難しいのですが、デンマークは国連が発表する世界幸福度調査によると、2017年は2位、2018年は3位、2019年は2位とトップ3常連国。その幸福の源には『ヒュッゲ』があると考えられており、今や世界的なムーブメントに発展しています。

『ヒュッゲ』とは、デンマーク人が大事にしている時間の過ごし方や心の持ちようのこと。人とのふれあいから生まれる、心地の良い雰囲気を指すデンマーク語です。デンマークのワークスタイルは、朝7時から働き始め、15〜16時には終業するのが当たり前。早く帰宅し、家族と夕食を囲み、リラックスタイムを過ごします」

ところが、日本でヒュッゲ文化が定着しにくい現実に直面したという。

「とある大手マンションデベロッパーの依頼で、ヒュッゲをテーマにしたマンションのコンセプト監修をさせて頂いたことがありました。家族全員が集まれる空間イメージをお話したところ、そのプロジェクトの核となるメンバーの方々からこんな声が上がったのです。

●『家族と一緒に何をして時間を過ごせばいいのかわからないという人も多いのではないか』
●『奥さんのテリトリーであるキッチンに1度入ったら、ずっと手伝わなきゃいけなくなるのではないか』
●『自分の居場所が定まらず落ち着かない』

このような意見に、言葉が出ないほど驚きました。何にも追われない時間があり、空間を作ることができたとしても、そもそも“休みの過ごし方がわからない”という日本人が多いことに気付かされたのです。2019年4月1日から、働き方改革の一部法案が施行されましたが、たとえ就労時間が短縮され、自由に使える自分の時間が増えたとしても、手持ち無沙汰で困ってしまう人が多いのが現実なのだと……」