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なぜ日本人は、「ビジネスジェット」の重要性を解しないのか?

未来の空旅はどう変わるか・最終回
戸崎 肇 プロフィール

こうした状況の背景には、日本におけるビジネスジェットを保有するコストの高さがある。固定資産税が重くのしかかってくるし、その保管場所を確保するのが難しい。

自宅から身近なところに駐機スペースを確保できるのは地方空港くらいしか期待できない。都市部の大規模空港は定期航空機がほぼ独占状態で、ビジネスジェットの発着枠からして取得することがかなり難しい。

 

そのため、地方空港においてビジネスジェットの受け入れを積極化させようと、国土交通省は地方空港に対し、ビジネスジェットを積極的に誘致する際には補助金を出すという優遇策を打ち出した。

ただ、地方空港は従来の定期便の維持・増便にしか関心がないのが現状であり、これを変えるにはより強力な推進策が必要ではないかと思われる。

そして、日本では、航空利用者の間での平等主義の考え方が強いこともある。欧米ではビジネスジェットを利用する人々は高額の利用料を支払っているのだから、それだけ優遇されて当然だという考え方が一般化しているのだ。

日本では、「空港は公共施設であり、それを利用するものに所得水準による差別化を行うことはまかりならん」といった風潮がまだある。

そのため、近年、マイレージクラブの上級会員については優先レーンを設けるようにはなったものの、それ以上の特別扱い、たとえばVIPに関しての取り扱いについては暗黙裡に行われている。

移動時間の削減は、欠かせない

ビジネスジェットの利用者については、一般の乗客よりもプライバシーの秘匿など、特別扱いが求められるのは事実である。

彼らがその地を訪れたという事実が知れ渡ると、ビジネス界において様々な憶測を促すことになるし、実際、秘密裡にビジネス交渉を行いたい場合には、絶対に人目に触れないことが求められる。

そのためには、一般の乗客とは完全に別の動線を確保しなければならない。ビジネスジェット利用客のために特別に入国審査(通常は着陸後、機内で済ませてしまう)を行ったり、機内までマイカーの乗り入れができるようにする必要がある。

情報時代だからこそ、移動が大切になる(photo by iStock)

しかし、日本の実態としては、ただでさえ空港における一般の外国人旅客受け入れのための施設も態勢も限界的な状況にある。特にCIQ(税関、入国管理、検疫)職員の不足は顕著であり、前回の連載にも書いたように、地方空港ではインバウンド誘客政策を進める上での大きなネックとなっている。

こうした人員をビジネスジェットにあえて振り向けようという発想は、現状では毛頭ない。根本的な発想の転換が必要である。

つまり、国家の成長戦略として、今後ビジネスジェットの利用者を取り込んでいくことの重要性も再認識しなければならない。情報時代に本格的に突入し、時間価値が急速に高まる中、ビジネスにおける移動時間の削減は、欠かせない努力目標となる。

テレビ会議やインターネットがいくら普及しても、重要な交渉は相手と直接対面して行う必要があるし、新たな市場開拓において、現地を視察し、その実情を探ることの重要性は、フェイク情報が蔓延している中、ますます高まっている。

自分の目で確かめなければならないことが多くなっている情報時代だからこそ、移動手段の利便性の向上はビジネス上急務であり、不可欠の要請となっているのだ。

「会議観光」を進めるためにも

また、ビジネスジェット・ユーザーは、市場において大きな影響力をもっていることが多い。そうした人々が日本にやってくる回数が多くなれば、それだけ日本にとってもビジネスチャンスが広がることになる。

その反面、彼らがビジネスジェットを利用して日本に来る際の利便性が悪ければ、国際会議も開かれなくなる

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