なぜ日本人は、「ビジネスジェット」の重要性を解しないのか?
未来の空旅はどう変わるか・最終回極めて効果的なビジネスツール
連載最終回は、これから期待すべき潜在的可能性をもつ航空ビジネスの分野として特に注目すべきビジネスジェットについて取り上げて論じてみたい。
ビジネスジェットはまだまだ日本では一般的な関心を集めてはいない。しかし、その今日的重要性は、日本においても確実に高まっている。
たとえばホンダビジネスジェットである。すでに海外では高い評価を得ているホンダビジネスジェットであるが、最近になってようやく日本国内でも、ホンダビジネスジェットの販売が開始された。同規模の機体シェアでは、全世界でトップを占めるまでに至っている。
ホンダビジネスジェットはいかにも日本製らしく、細部に至るまで徹底して機能化を追求している。タラップとして使用される扉には、飛行中は飲み物を置くポケットも設置されている。一見するだけでは気が付かないが、限られたスペースを最大限活かすための工夫が施されているのだ。
また、汎用型である8人乗りのタイプでも、最もその購入者が多いのは日本人だとの話を、アメリカで毎年行われているビジネスジェットおよびその関連商品の商談会(NBAA:National Business Aviation Association)で販売担当者から教えてもらった。

ただ、日本では、ビジネスジェットはまだまだお金持ちが道楽で持つ「富裕財」であるとの認識が強い。しかし、情報時代においては、こうした見方は全く間違っている。事実、ビジネスジェットは移動時間を最小化し、かつ移動中においても仕事を行う上での最良の環境を提供してくれる。
これを活用することは、特にトップマネジメントにおいては極めて効果的なビジネスツールとなるのであり、それを保有することは至極当然であり、むしろそれをもつは、その個人、あるいは会社において、仕事がうまく機能しているということの証にもなるのだ。
定期便を使うと信用が下がる
それにもかかわらず、日本では、ビジネスジェットを保有していることは無駄な出費として株主総会などでは批判の対象となる。
そのため、実際にビジネスジェットを保有していても、その事実を明らかにしないという傾向があり、ビジネスジェットの社会的評価になかなかつながっていない。
しかし、国際的にビジネスを展開する際には、ビジネスジェットを利用することは上記のように時間価値を最大化するとともに、投資家からの信頼性の確保の問題にもつながる。
これも実際の事例だが、ある企業が欧州で投資家に対し投資を呼びかけるための説明会を開催する際、その説明担当者がビジネスジェットを使わず、定期航空便を利用して行ったような場合、その企業の経営上の信頼性に関して大いに疑義を持たれてしまうとのことであった。
ちなみに、河野外務大臣が外務大臣のための専用機が必要であると主張されるのも、これまで見てきた理由から当然の話であるということも理解されよう。
日本で流行らない制度的な理由
その一方で、日本においてビジネスジェットの所有が進まないのは、制度的な理由もある。
日本の国籍をもつビジネスジェットをJ機といい、アメリカの国籍をもつビジネスジェットをN機と呼ぶ。N機が2万機に迫ろうとしているのに対し、J機の機数は2桁にとどまっている。アジアでは中国、インドが3桁で、後発ながらすでに日本の上を行っている。