トランプ「安保改定」発言に慌てる安倍政権、安保政策の大きな矛盾

日米安保のゆくえ
添谷 芳秀 プロフィール

そして、防衛出動を定めた自衛隊法第76条の改正では、以下のとおり、従来の防衛出動要件を第一項とし、新たに第二項が追加された。

内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。(略)
一 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態
二 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態

上の第二項が存立危機事態であり、その際の内閣総理大臣による自衛隊の出動命令が、集団的自衛権に行使にあたるのである。

 

「日米安保改定」は平和安全法制の論理的な帰結?

「我が国と密接な関係にある他国」とは、まず何よりも米国を指すことは明白だろう。しかし法律上は、日本の存立危機事態を生む武力攻撃は「他国」に対するもとのされており、米国に限定されているわけではない。

安全保障問題として合理的かつ論理的に考えれば、朝鮮半島有事は日本の存立危機事態となるだろう。すると、平和安全法制下では、日本の総理大臣は米国のみならず韓国を支援するために自衛隊の出動命令ができることになる。しかし、現実問題としては、当面その可能性はほぼゼロだろう。日本でも韓国でも、政権がそうした事態を真剣に検討しているとは思えない。

すると現実的には、存立危機事態における集団的自衛権の行使は、当面日米間に限定されると考えてよい。ちなみに、こうして平和安全法制が存立危機事態に限って集団的自衛権の行使を認めたことには、憲法9条を変えずに合憲論で処理したという事情があった。

以上を踏まえると、日米安保条約の改定に触れたトランプ大統領の発言は、日本に対して「集団的自衛権の行使が可能になったことを日米安保条約にどう反映させるのか」という問題を惹起してもおかしくはない。