なお、扶養に入れるかどうかの最終判断は、被保険者の勤務先の「健康保険組合」に委ねられる。状況によって扶養の認定に違いがあるし、総合的に勘案して被扶養者と認められる場合もあるので、迷っている方には、「まずは申請してみては?」とお勧めしている。
さて、ここまで時間を掛けて、丁寧に説明すると、田中さんご夫婦もようやく納得し、手続きしてみようかという気持ちになったようなのだが、妻の陽子さんの表情がどうも浮かない。
夫の一男さんが席を離れた際に、それとなく聞いてみたところ、「実は、夫が私の扶養に入ると、いつまでも、仕事を辞められないんじゃないかと思って…」とぽつり一言。
田中さんご夫婦は、お子さんもいないことから、ずっと家計は別々にしており、陽子さんは、社会保険の手続き云々以前に、一男さんが扶養に入ることで、経済的にも陽子さんに依存してくるのではないかという点が気がかりだったらしい。
そこで、一男さんが戻ってこられた時点で、がんの治療が落ち着いた後、再びできるだけ働きたいという一男さんの仕事への意向を確認。とりあえず、治療中は、一男さんが陽子さんの扶養に入り、気力、体力ともに、本格的な就労が可能になった時点で、今度は陽子さんが一男さんの扶養に入る方法もあることをお伝えした。
いやはや、社会保険の要件ひとつとっても、知識がない方々には理解が難しいということが良く分かった。そしてそれ以上に、個々の家庭によって、節約できるからといってその方法がベストとは限らないことも学んだ事例だったといえる。