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目の前の患者に優先順位をつける…「トリアージ」をめぐる諸問題

日本で現実的に問題になっていること

登戸での川崎殺傷事件

今年の5月28日、川崎市の登戸でスクールバスを待っていた児童と保護者が、刃物を持った男に襲われた不幸な事件があった。児童ら18人が負傷、小学6年生の女児と男性1人が死亡、加害者は直後に自殺という凄惨なものだった。

大量の死傷者が出たことから、市消防局は「大規模救急出動」を指令し、現場には、普通の救急隊ではなく、医師、看護師、救急救命士らを含む「災害派遣医療チーム(DMAT)」が派遣された。

現場でのDMATの重要な任務は、多数の傷病者を緊急度や重症度に応じて仕分けし、応急処置や搬送の優先順位付をすることにある。

それがトリアージで、フランス語のtrier(選別する)に由来する単語だ。

 

現場でのトリアージでは、責任者(トリアージオフィサー)の指示に従って、新書より一回り大きいくらいのトリアージ・タグというカードが負傷者の右手首につけられる。

そうすることで、一目でその人に次の処置(搬送や応急処置)を行う優先度が誰にでも分かるようにするのだ。

トリアージ・タグ〔PHOTO〕wikimedia.org

最優先の第一順位は赤色の印で、生命を救うために直ちに処置を必要とする状態である。

第二順位は黄色の印で、入院治療は必要だが比較的に全身状態が落ち着いていて、簡単な指示でのやりとりが本人とできる状態である。

そうした人びとは、赤色タグの人びとの搬出後まで待機して、第二陣として搬出される。

第三順位は緑色の印で、自分で歩くことができて外来処置による治療で十分と思われる状態である。

したがって、歩いて現場の救護所に向かってもらうことになる。

心肺停止していたり呼吸をしていなかったりする場合は黒い印で、対応は赤色や黄色の人びとの搬出後になる。

さらに、現場の救護所で医師が死亡診断した場合には遺体として扱われる。

川崎殺傷事件では、現場のトリアージで2人が黒いタグと判定されたという。