損保ジャパン「介護への配置転換」次に同じことが起こる会社はここだ

この流れは止められない
加谷 珪一 プロフィール

業務の定型化で大量の余剰社員が発生

これに加えて、AI(人工知能)技術の発達によって、多くの仕事が機械に取って代わられるとの予測も出ている。実際にAIが社会に普及するまでには時間がかかると見られるが、企業の最前線はもっと現実的である。AI導入の前段階として、RPAを使った業務の自動化が急ピッチで進んでいるのだ。

RPAは、業務をあらたにシステム化するのではなく、既存システム上での操作をソフトに覚えさせ、一連の業務を自動化していくという簡便な手法である。この手法であれば、既存システムに大きな変更を加える必要がないので、AIの本格普及を待つ必要はなく、低コストで業務を自動化できる。

しかも銀行や保険など金融業界にはそもそもRPAを導入しやすいという土壌がある。

RPAは同じ作業を繰り返す定型業務の自動化にもっとも効果を発揮するので、定型業務の割合が高い銀行や保険会社との相性が良い。これに加えて日本の銀行や保険会社は、金融ビジネスの本質とは裏腹に、労働集約的な業態となっており、人件費の負担が重いという特長がある。金融業界において真っ先にRPAが導入されるのは、当然の成り行きといってよいだろう。

 

諸外国の企業であれば、余剰となった人材は金銭解雇で社外に放出することになるが、日本の場合、そうはいかない事情がある。労働法制上、企業は原則として解雇ができないことに加え、年金財政の悪化によって、政府は70歳までの雇用延長を企業に求めており、企業は名実共に、社員を一生涯、雇用する必要に迫られている。

業務のロボット化によって仕事の省力化が実現したり、自社のビジネス領域が時代の変化で消滅することがあっても、企業は社員の総数を減らすことができないので、自社グループ内で配置転換するしか対処方法がなくなってくる。今回、損保ジャパンがリストラを実施するにあたり、介護子会社への転籍という措置が含まれたことにはこうした背景がある。

派遣会社を作り、リストラを進める

実は、あまり表立って説明されてはいないが、一部の大企業ではグループ内に人材派遣会社を作り、そこに余剰人材を集め、まったくの異業種に自社の社員を派遣する取り組みをスタートしているともいわれる。

損保ジャパンの場合には、たまたまグループ内に介護サービス会社があったことから、この話題が大きく取り上げられたが、介護業界は慢性的な人手不足に苦しむ業界である。余剰人員を抱える企業にとっては、介護業界が有力な派遣先のひとつとなる可能性はそれなりに高いだろう。