# 世界経済

米朝「電撃会談」はまだ序章で、これから本当に起きるヤバいシナリオ

米・中・朝・日、最後に勝つのはあの国
豊島 逸夫 プロフィール

不快極まりない…

折しもG20が開催される直前に米民主党がテレビ討論会を大々的に開催し、約1500万人が視聴。米国内で巻き起こりつつある不景気への不満はライバル民主党に追い風になっていることから、トランプ大統領にとって関税交渉の早期妥結は至上命題となっていたわけだ。おまけに、来年の大統領選のためにも妥協を迫られていたという事情がある。

こうした背景があるだけに、今回のG20ではトランプ大統領のほうから、これまではスパイ行為を強く糾弾してきた中国ファーウェイに対してでさえ、制裁緩和を打ち出したのだろう。私は関税分野についての妥協にとどまると考えていたのでこれには驚かされると同時に、トランプ大統領が来年の大統領選に向けて危機感を強めていることがよく見て取れた。

 

とはいえ、トランプとしてもあまり譲歩しすぎては、中国に煮え湯を飲まされる可能性がある。昨年末のアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたG20での米中サミットで習近平国家主席と握ったはずの「一時休戦」が、中国の中南海の長老たちの反対で反故にされるという苦い経験もある。中国に主導権を握られると、どんな仕打ちが待っているかわからない。

そこで用意したのが、あの「歴史的瞬間」ではなかったか。

〔photo〕gettyimages

トランプ大統領が板門店で金正恩委員長とがっちり握手を交わした背景には、G20サミットの直前に習近平国家主席が訪朝したことも念頭にあったと考えられる。習近平国家主席もG20での米中交渉で、一石を投じるカードとしたい思惑があったはずだ。

「トランプさん、北朝鮮は中国に任せてください。何も心配はいりませんよ。だから安心して貿易交渉を進めましょう」

習近平国家主席は訪朝することでこんなメッセージを米国側に送ったわけだが、トランプ大統領にとってこの習近平国家主席のメッセージをそのまま受け入れることはできなかった。

習近平国家主席の意をそのままを受け入れれば、今後の北朝鮮の核問題が中国の意向で大きく左右されかねず、弾道が向けられている米国民にとっては不快極まりない状況となりかねない。それこそトランプ大統領がいま懸念する最悪の事態であった。