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「弁護人はなぜ犯罪者を守るのか」という批判に対する私の回答

刑事弁護人 亀石倫子はこう考える
 
罪を犯したかもしれない人物の車に、警察が勝手にGPS端末を取り付け、徹底的に行動を把握する行為を繰り返していた――。令状なき捜査は許されるのか。警察が一般市民の行動確認を行う危険性はないのか。
2017年に「令状なきGPS捜査は違法」の最高裁判決を日本で初めて勝ち取った弁護団。その弁護団を率いた女性弁護士の奮闘やチームの苦悩・活躍を描いた本『刑事弁護人』
弁護の依頼から、日本裁判史上に残る「GPS事件」に発展していくまでの記述は、すべて実話でありながら、まるで小説のようなストーリー展開を見せていく。
          第一章公開へのご好評の声にお応えして、第二章を特別掲載!  

(第一章のあらすじ) 窃盗の容疑で逮捕された黒田行男の弁護を引き受けることになった亀石倫子。彼女は、初めての接見の場で、黒田から「自分が犯行に使った車に、警察は勝手にGPSを取り付けてずっと監視していた」と聞かされる。「自分は罪を犯したからそのの責任はとります。でも、警察ってそんなことまでやっていいんですか」と黒田に言われた亀石は、次回の接見までにGPS捜査について調べて黒田に報告することを約束した。       

第二章 賭け

GPS捜査をめぐる裁判についてウェブサイトで調べてみると、最初にヒットしたのは2012年の「ジョーンズ判決」だった。

2004年、アメリカ連邦捜査局(FBI)とコロンビア特別区(ワシントンD.C.)警察の合同捜査本部は、アントニー・ジョーンズに対して麻薬不法取引の容疑で捜査を開始した。捜査によって得た情報に基づき、捜査当局はコロンビア特別区連邦地方裁判所にジョーンズの妻名義で登録されている車にGPSを取りつける許可を求め、令状の交付を申請した。

裁判所は令状を交付したが、その際「コロンビア特別区内に限定」「10日間限定」という条件を課した。だが、令状交付の11日後、捜査員はメリーランド州で該当する車にGPSを装着。その後も4週間にわたり、GPSを利用してジョーンズを追跡した。

結果、ジョーンズは逮捕・起訴される。ところが、令状の条件を無視して得た証拠をもとに起訴されたジョーンズは、GPSによって得られた証拠を採用しないよう裁判所に求めた。連邦地方裁判所は、ジョーンズの申し立ての一部を認めた。

控訴審のコロンビア特別区連邦控訴裁判所は、「令状なしにGPSを使用して証拠を収集する行為は、ジョーンズのプライバシーを侵害しており、不合理な捜索や逮捕押収を禁じた連邦憲法修正第4条に反する」として原審判を覆した。連邦政府はこれを不服とし、連邦最高裁判所に上告。審理の末、GPSを被疑者の車に装着した行為は憲法修正第4条にいう「捜索」にあたり、さらに、令状で許可された期間と場所を逸脱して証拠を収集する行為もまた憲法修正第4条に違反する――との判断を下したのである。

最高裁のソトメイヤー判事は、補足意見を次のように述べた。
「GPSによる監視は、他の監視手段に比べると低コストで行うことが可能となり、短期間でも対象者の行動をすべて白日の下にさらすことができる。そこには政治性、専門性、宗教性、性的嗜好などといったプライバシーが反映する。これらの記録を保存し、編集して利用することにより、対象者を萎縮させたりプライバシーを侵害したりすることが容易となる。このようなGPSによる監視の特徴を看過することはできない」

ワシントンD.C.(Photo by iStock)