ハンセン病家族「画期的勝訴」社会を動かすきっかけは一冊の本だった

真に過ちを認め、記憶するために
崎山 敏也 プロフィール

人生が変わるわけではないけれど

16時から行われた記者会見では、原告団長の林力さん(94歳)がこう述べました。

「ここまでの判決が出るとは思ってはいなかった。こういう判決が出て、教育の力で、国民の中に、ハンセン病の歴史、現実、課題が明らかになることは、日本の人権の状況にプラスになると思う」

林さんは、父親がハンセン病の患者であることを当初隠していましたが、教師として部落解放運動に関わる中で、次第に隠さなくなったといいます。林さんが裁判所を出る時、こう呟いたのが印象的でした。

「ここまで長かった」

記者会見の様子(筆者撮影)

また、原告団副団長の黄光男さんは「国はハンセン病の啓発活動はやってきましたが、家族のことが抜けていた。そのことも含めて、もっと一般の人にも知ってほしい。私たちの人生が、この判決で何か変わるかといえば、たぶん変わらないでしょう。一生を台無しにされた方がたくさんいるんですから。勝訴判決が出ても、人生は取り戻しようがない。心の底から喜べるかといえば(難しい)。でも、一応の区切りではある。ここから、さらに先へ進まないと」と、複雑な胸中を語りました。

さらに7月2日(火)には、東京で原告団から国会議員への働きかけと判決報告会が開かれました。

報告会では、6名の顔出しNG・匿名の原告も、ホールの中の指定された席に座って発言しました。父親がハンセン病患者だったという一人の女性は、こう涙ながらに言います。

 

「初めてこういう場に来ました。そして今はこっちの席(顔が見えないようになった席)にいます。ごめんなさい」「まだ母親もきょうだいもいます。私一人なら顔も名前も出せるのですが、それができないことが悔しい」

また、黒坂さんもあいさつに立ち、「きょうは、国に対する『控訴するな』という闘いではありますが、もうひとつは、自分が(ハンセン病患者の)家族だということを誰にも言えないという状況(を改善し)、家族の方たちが隠さなくて済む社会をどうやって作ってゆくのか、それが私たちの責任だと思います」と話しました。