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地下鉄「無人運転」が、フランス人にできて日本人にできなかった理由

「文化とエスプリ」のおかげ?

先頭車両に乗ると、そこには…

フランスのパリで、運転士がいない無人運転の地下鉄に乗った。

電車が勢いよくホームに滑りこんで停車すると、電車のドアとホームドアが同時に静かに開く。列車の先頭部の車内に乗り込むと、そこには運転席がなく、前面窓に面した座席に乗客が座っている。

パリ・メトロ1号線の無人運転車両の先頭(筆者撮影)

列車は、ドアが閉まると静かに走り出し、なめらかに加速・惰行・減速をして、次の駅に滑りこむ。最短運転間隔は85秒。初めて利用すると、ラッシュ時における運転頻度の高さと、駅での待ち時間の短さに驚かされる。

なぜ日本には、このような無人運転の地下鉄が存在しないのか。もちろん、無人運転の電車は、「ゆりかもめ」などの新交通システムで走っているが、地下鉄で走っていないのはなぜか。その理由を探ってみた。

なぜ「無人」が市民に理解されたか

本題に入る前に、まずパリの地下鉄で無人運転が行われるようになった経緯をたどってみよう。

現在パリでは、「メトロ」と呼ばれる地下鉄のうち、2路線(1号線と14号線)で無人運転の電車が走っている。最新の路線である14号線では1998年の開業時から、最古の路線である1号線(1900年開業)では2011年から、それぞれ無人運転を実施している。

これは、無人運転に多くのメリットがあるからだ。

 

無人運転のメリットと言うと、一般的には、運転士が乗務しないことによるコスト削減が注目されがちだが、それだけではない。運転士を確保する必要がないため列車の増発が容易になることや、高密度運転ができること、運転操作の無駄が少なく、最適な運転制御ができることなどの利点もある。

ただし、デメリットもある。

もし乗務員が車内にいれば、非常時に乗務員が乗客を避難誘導することができるが、完全な無人運転ではそれができないので、乗客の不安感が高まる可能性がある。ましてや暗いトンネルの中で電車が動かなくなるような事態を考えれば、なおさらだ。