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G20~米朝電撃会談で見せつけたトランプ流「商談外交」の勝利

そしてリベラリズムは形骸化した

世界は「G0」に向かいつつある

先週末に行われた大阪G20(主要国・地域)サミットと、その後のハプニング的な米朝首脳会談。すべては、ドナルド・トランプ大統領の「商談外交」の独断場だった。

思えば、2017年7月にデビューしたハンブルクG20サミットで、トランプ大統領は、出席にさえ難色を示した。「外交交渉とは2国間でやるものであって、多国間でやっても意味がない」というのが、トランプ大統領の「商談外交」の特徴の一つだ。なぜなら、自分が大統領になるまでやってきた「商談」は、相手方の社長と「1対1」で行うものだったからである。

結局、トランプ大統領は、ハンブルクG20に参加はしたものの、全体ランチ会合をすっぽかして、ウラジーミル・プーチン大統領との長い米ロ首脳会談を、通訳だけ引き連れて「1対1で」行ったりした。「パリ協定(気候変動抑制協定)からの離脱は当然だ」とも嘯(うそぶ)いた。

昨年12月のブエノスアイレスG20サミットは、おとなしく出席したものの、首脳宣言に「反保護主義」を明記することを拒否した。そしてG20サミット後に、習近平主席を脅しつけるような米中首脳会談を経て、ふてぶてしく帰路についた。

そして先週末の大阪大会が、トランプ大統領にとって、3回目のG20となった。今回、分かったのは、このゴジラのような暴れん坊男は、G20という「舞台」で自分がどう演じたらよいかを、すっかり熟知していたということだった。「商談外交」を演出する術(すべ)を覚えたのだ。

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大阪G20サミット初日の6月28日、英フィナンシャル・タイムズが、G20を予見するような興味深い記事を掲載した。タイトルは、「リベラリズムは『時代遅れ』になったとウラジーミル・プーチンは言う」。プーチン大統領が大阪へ出発する前日に、モスクワで応じたインタビューだ。全文は、下記のサイトで読める。

https://www.ft.com/content/670039ec-98f3-11e9-9573-ee5cbb98ed36

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インタビューした記者の意見や解説が多すぎて、プーチン大統領の「肉声」が少ないのが残念だが、それでもプーチン大統領の肉声だけを拾うと、こう述べている。

・リベラルな考えはその目的を終えた。
・(リベラル派は)これまで何十年もやってきたように、簡単に何かを、もしくは誰かを統治することができなくなった。
・(アンゲラ・メルケル大統領が100万人の移民・難民を受け入れた)リベラル派の考えは、何も成し得ないということを予見させるものだった。これらの移民は、殺人、略奪、強姦などを、罰せられることなく行える。なぜなら彼らの移民としての権利は守られているからだ。
・冷戦というのは悪いものだったが、少なくともそこには一定のルールがあった。そしてそれを、国際社会の参加者たちは、多かれ少なかれ聞き入れ、あるいはフォローしようとした。だがいまや、すべてのルールがなくなってしまったようだ。

 

インタビューした記者は、プーチン大統領が言いたいのは、「リベラリズムの形骸化」だとしている。

〈 1945年に第2次世界大戦が終わって以降、西側のリベラルな概念が世界を支配してきた。ところが近年、それに警鐘を鳴らす動きが顕著になってきて、それがアンチ・エスタブリッシュメントの指導者を生んだ。ドナルド・トランプ大統領に始まり、ハンガリーのビクトル・オルバン首相、イタリアのマテオ・サルビーニ副首相兼内相、そしてイギリスのブレクジットの反乱だ 〉

この記事の言外からは、次のようなプーチン大統領の高笑いが聞こえてくるようだ。

「前世紀末にソ連を崩壊させた西側のリベラリズムの連中は、21世紀こそリベラリズムの天下だと思っていただろうが、そうは問屋が卸さない。いまやトランプ大統領を始め、多くの国々が『自国第一』を掲げ始め、リベラリズムの方が時代遅れになったではないか」

21世紀初頭から国際舞台の第一線に立ち続けているプーチン大統領の指摘は、的を射ている。その意味では、リーマン・ショック直後に、主要国・地域の結束を示す意味で2008年に始まったG20(Gはグループの意)はもはや形骸化し、世界は「G0」に向かいつつあるのかもしれない。

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