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中国で「夜の顔役」を逮捕したら、処刑されたはずの死刑囚だった話

地方権力と反社勢力が一体化

殺人を16年間見て見ぬふり

中国では2018年1月に、中国共産党と国務院が『“掃黒”・“除悪”特別闘争に関する通知』(以下「掃除通知」)を出した。

「掃黒」は「掃黒社会」の略で、「黒社会(暴力団)」を一掃することを意味し、「除悪」は悪人や悪事を除去することを指す。すなわち、暴力団の一掃と悪人や悪事の徹底除去を目的とした特別闘争を展開することを全国へ通知したのだった(以下、「掃黒」・「除悪」特別闘争を「反社会勢力一掃特別闘争」と呼ぶ)。

習近平は中国共産党中央委員会総書記に就任した直後の2013年1月に、特権を利用して大きな腐敗を行う指導幹部の「トラ」と、庶民の周囲で小さな腐敗を行う小役人の「ハエ」を取り締まるための『トラ退治とハエ駆除を同時に行う腐敗撲滅運動』(以下「トラ退治とハエ駆除」)を発動した。

掃除通知はトラ退治とハエ駆除に続いて全国規模で着手する反社会勢力一掃特別闘争を全国へ通達したものであり、その標的はトラやハエと連携して羽振りを利かせる反社会勢力を摘発し、彼らを獄舎に繋いで社会の安定を図ることを目的としたものであった。

 

さて、 2019年6月20日の午前0時頃、湖南省西部の懐化市に属する新晃侗族自治県にある「新晃侗族自治県第一中学校」(略称:新晃一中)の運動場の地下から白骨死体が発見された。

新晃侗族自治県では反社会勢力一掃特別闘争を展開する中で、2019年4月に故意傷害、不法監禁、集団乱闘などの容疑で杜少平など7人を逮捕した。

この直前に2003年に失踪した鄧世平の息子の鄧藍氷が、「父親は新晃一中の運動場工事に絡んで杜少平に殺害されたに違いない」と告発していたことから、警察が杜少平を取り調べたところ、杜少平から2003年1月に鄧世平を殺害して、当時工事中であった新晃一中の運動場に埋めたとの自供を得たのだった。

6月18日の午前9時に地元警察は新晃一中の運動場を掘り起こし作業を開始し、丸2日近い作業を経て、日付が20日に変わる頃に白骨死体と衣服および残留物と思われるものを発見したのだった。