「終身雇用に後ろ向き」はトヨタ自動車の躓きの石となる

トヨタをトヨタたらしめるものとは
大原 浩 プロフィール

外国人役員への高額報酬はどうなのか?

さらに言えば、トヨタ自動車が、ディディエ・ルロワ副社長に役員報酬として10億円を支払ったことも大いに疑問だ。

欧米の大会社に比べたら大したことはないという意見があるかもしれないが、高額報酬を乱発する欧米企業の方が誤っているのである。

ピーター・F・ドラッカーは「一般従業員と経営者との給与格差は20倍までにしなさい」と述べている。

つまり一般社員の報酬の平均が500万円であれば、社長の報酬は1億円までということである。例えトヨタ自動車の従業員の平均年収が1000万円であっても、役員への報酬は2億円までである。

まず、費用対効果の面で言えば、年収500万円の人間に1000万円を与えれば、がぜんやる気が出るが、すでに1億円もらって十分裕福な人間にさらに1億円与えて、どれほどやる気が増加するかということである。

1000万円-500万円=500万円の20倍の効果が、2億円-1億円=1億円にあるわけでは無い。しかも増えた分の1億円の多くが累進課税で税金になる。

しかも、ドラッカーは役員同士の報酬格差は基本的に無いほうが良いとも述べ(多くても25%程度)ている。その方が、役員同士の対等の関係を維持でき、役員それぞれの職務の分担もスムーズにできるからだ。

さらに、会社の業績の良し悪しは、役員の能力による部分はそれほど大きくない。大多数を占める従業員の「やる気」が大事である。役員だけに高額報酬を与えるのは、確実に現場の従業員の「やる気を低下」させる。

外国人役員は「傭兵」だから特別だという側面もあるかもしれない。しかし、だとすれば傭兵を責任ある役員の地位につけてはならない。

金融業界でも、腕利きのディーラーは、傭兵として色々な金融機関にスカウトされて天文学的な報酬を受け取るが、ボード(役員)に入ることはまずない。いくら専門的な能力がすぐれていても、自分の会社を愛し「いい時も悪い時も」一緒に歩んでいこうなどとはこれっぽっちも思っていないからである。

日本経済が低迷しているとしたら、それは無能な経営者たちの責任が大きい。無実の従業員の首を切る前に、自らの愚かさを恥じて彼らが切腹すべきなのである。

 

ソフトバンクとの提携は最悪である

豊田章男氏は、世界でも有数の優れた経営者だと思うが、ここのところの自動車業界の激変・混乱で、自らの立ち位置を見失っているように思う。

ソフトバンクがどれほど怪しげな会社かは、当サイト6月14日の記事「まさかとは思うが『ソフトバンク・ショック』はありえるのか?」で詳しく述べているが、トヨタ自動車の将来にプラスになるような会社ではない。

確かに自動車業界をめぐる環境は激変しているが、その中で流される「流言飛語」に惑わされず王道を突き進むのがトヨタウェイである。

おおよそトヨタの哲学とは真逆のソフトバンクとの提携は早期に解消すべきだ。

トヨタシステムの重要な要素である「現地現物」(社長役員であっても、文書の報告だけで判断せずに、販売店や工場の実態をしっかりと自分の目で観察して判断すること)をしっかりと思い起こして、「正しい道」に戻ってほしいものである。