「終身雇用に後ろ向き」はトヨタ自動車の躓きの石となる

トヨタをトヨタたらしめるものとは
大原 浩 プロフィール

リストラを続ける会社に未来は無い

「首切り屋ゴーン」については、当サイト5月15日の記事「国策自動車会社であるルノーも日産も、結局、生き残れはしないだろう」などで述べてきたが、リストラによる企業の再生などというものは、タコが自分の足を食べて生き伸びるようなものである。

将来の餌を捕まえるはずの8本の足のうちの何本かを失って、7本、6本になってしまってはさらに窮地に陥る。

もちろん、肥満体を減量することは必要だが、多くのリストラは脂肪ではなく、手や足の重要な部分を切断してしまっている。

リストラをしなければならない会社で、もっとも余分な脂肪分は、社長・会長を含む役員・幹部である。現場で、役職員・幹部の指示で働いている従業員は哀れな被害者にしか過ぎない……。

 

それでも、一般従業員をリストラしなければならない局面がやってくることがあるかもしれない。

その時には、リストラが終わった後、直接、リストラを指揮した幹部が自ら去っていくのはもちろん、会長・社長以下役員も、自らに重い罰を課すのが日本企業の当たり前の伝統であった。

リストラをしなければならない状況に陥るのは、現場の従業員の責任ではなく、無能な役員・幹部の責任であることは明らかである。

それなのに自らの無能さによる失策を「外部要因」のせいにして、往生際悪く会社に居座り続けるのは「武士の風上にも置けない」輩である。もっとも、彼らを武士に例えること自体、武士の品格を汚すことになるのであろうが……。

また、従業員の企業への信頼は、何十年もかけて築き上げなければならないが、失うのは一瞬である。トヨタ生産方式に限らず、すぐれた企業の経営システムというのは、従業員の企業への「信頼」がベースになっている。

だから、万が一リストラをする場合でも「1度限り」にして、2度と行わないことを従業員に信じてもらわなければならない。

かつて終身雇用が誇りであったIBMが急速に衰退し、90年代、ルイス・ガスナーCEOの時代にリストラを含む大胆な改革で甦ったのは有名な話である。しかし、その後もだらだらとリストラを続け、従業員の信頼を失ったため、現在かつての優良企業の面影はない。

首切り屋ゴーンに長年支配された日産も悲惨な状況である。