# ハラスメント

「#KuToo」運動を「女のわがまま」で片付けてはいけないワケ

これは重要な労働問題である
竹信 三恵子 プロフィール

なぜ「女のわがまま」と言われるのか

このような当たり前の労働安全衛生要求が、「わがまま」バッシングの標的になってしまう背景には、日本社会に根強い「ブラック&ホワイト企業」体質がある。

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命名者の野村正實・東北大名誉教授は、電通やトヨタなど大手ブランド企業の過労死・過労自殺の例から、過労死は、社員を低賃金で使い倒す新興産業(狭義の「ブラック企業」)にだけ起きるものではない、と指摘している。

(参考:『「優良企業」でなぜ過労死・過労自殺が?~「ブラック・アンド・ホワイト企業」としての日本企業』ミネルヴァ書房、2018年)

過労死の背景には、戦後の日本の「優良企業」が、実態は利益追求集団にすぎない企業に、「共同体」という意識の上での一体感(上部構造)を与えて奉仕させてきた仕組みがある、という見方だ。

すなわち、「共同体」として、丸抱えで手厚く社員の面倒を見る「ホワイト」なイメージと、そのメダルの裏側として、従業員のすべての時間・生活を会社が丸抱えで利用しようとする「ブラック」な労務管理が同居する「ブラック&ホワイト企業」のシステムだ。

 

背景の「ブラック&ホワイト企業」というシステム

こうした企業のイデオロギーは、日本の多くの働き手に植え付けられている。その下では、「足が痛い程度のこと」で会社のニーズに盾突くことは、「共同体」の一体感に対する少数派女性の反逆(=「わがまま」)であり、多数派である男性たちへの「迷惑」であり、他の女性たちへの「扇動」とされる。

問題は、こうした「わがまま」攻撃の結果、より働きやすい環境づくりに役立つはずのヒール・パンプスの強制への疑問をはじめ、さまざまな異論が封殺され、実質的な効率が悪化してしまうことだ。

先ほど挙げたブログでも、会社の都合のために耐え抜くことが「職業意識」とされている。だが、「職業意識」とは本来、健康を守って力を発揮できる持続可能な労働環境を獲得するため、会社ともきちんと交渉できる働き手としてのプロ意識のことではないのか。

6月14日付朝日新聞デジタルの就業ルール調査は、ホテルや航空業界を中心に、顧客の期待を忖度してヒール・パンプスを「推奨」などの形で事実上義務付けている例が少なくないことを明らかにしている。

ただ、この記事からは、一部の企業で、個人の事情に沿って選択の余地を残す工夫をしていることも見えてくる。たとえば、外資系ホテルでは、「フラットシューズは着用禁止だが、許可があれば、着用可」で、「これ以外の靴の着用は会社に相談」とし、外資系の航空会社が、「パンツの場合はヒール無しも可」としている(https://digital.asahi.com/articles/ASM6D53FCM6DULFA01T.html?iref=pc_extlink参照)。