# ハラスメント

「#KuToo」運動を「女のわがまま」で片付けてはいけないワケ

これは重要な労働問題である
竹信 三恵子 プロフィール

ファッションの問題ではない

だが、ここには大きな誤認がある。「クーツー運動」が問うているのは「履かない、履きたくない」というファッションの問題ではない。

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ヒールの長時間着用は腰痛や足の変形などの健康障害をもたらす恐れがあるとして医学界も警告しており、そうした一種の危険行為を、会社が、業務命令の形で、女性だけに、義務付けてよいのか、という点なのだ。

 

19世紀の過酷な工場労働で病気やケガ、死亡が頻発して以来、安全衛生は労働界の大きな課題となってきた。それは、「生存を支えるためにカネを稼ごうと労働したら、体を壊され生存を脅かされる」という悲惨なものだからだ。

日本の労働安全衛生法が第1条で「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成と促進を目的とする」とうたっているのも、こうした歴史が背景にある。だが、そんな中でも、働く女性に固有の労働安全衛生問題は軽視されがちだった。

たとえばセクシュアルハラスメントは、「たかが職場での色恋沙汰」と片付けられがちだった。

それが、上司や同僚の行為によって被害者が重い体調不良を引き起こし、働き続けられなくなる事態にまで追い詰められる「労働災害」と考えられるようになったのは、わずか8年前の2011年、派遣社員だった佐藤かおりさんが行政訴訟で、「セクハラに起因する疾病」として労災認定を勝ちとってからだ。

同様に、「たかがファッション」と片付けられていた働く女性の靴のあり方が、その働きやすさを阻害する深刻な問題であることを表面化させたのが、今回の「クーツー運動」だった。