アメリカという「狂信的な国」はどんなふうに生まれたか

『ファンタジーランド』を読む(前編)
堀井 憲一郎 プロフィール

「常軌を逸したカルト教団」?

このあと1620年になってやってきたのがメイフラワー号に乗ったピルグリム・ファーザーズである。当書によると「常軌を逸したカルト教団」の人たち、ということになる。

そしてアメリカの歴史というと、この1620年のメイフラワー号から語られることが多い。1590年代から1600年代にかけての「架空のゴールドラッシュおよび架空のアジア航路の探索」にはあまり触れられないのだ。アメリカ人にとって、自分たちの先祖として認められるのは、メイフラワー号に乗ってきたピューリタンということである。

ピューリタン(清教徒)という呼び名は、「ばか正直」という揶揄するニュアンスが含まれているので、彼らはメイフラワー号に乗ってきた人たちをピューリタンとは呼ばず、ピルグリム・ファーザーズと呼びたがる。このことも当書で知った。

 

そして、メイフラワー号でやってきた人たちが目指していたのは「神政国家」だそうである。神の意志により政治を決めていく社会である。マサチューセッツ湾周辺に10年あまりで1000人以上のピューリタンが上陸し、彼らは「神の国」の建設をめざして入植していった。

「アメリカは常軌を逸したカルト教団によって建設されたのである」というのはそういう歴史を指している。神の言葉によって生きて行こうとする人たちは、部外者からみればたしかに「常軌を逸したカルト教団」と言うしかない。

アメリカ人たちは、自分たちの始まりを「フェイクニュースで上陸して何も見つけられなかった人たち」ではなく、「狂信的なカルト教団」のほうにすることを選んだ。すでにこの時点で「客観的に正しい歴史的事実」ではなく「自分たちが信じたい事実」のほうを選んでいるのだ。そのあとずっとそれが繰り返される。

もちろんいまのアメリカ人にカルト教団の宗教精神が継がれているわけではない。しかしその根本精神は残っている。

「独善的で、自分の信じたいように信じる」という部分である。それが宗教方向に出ればカルト教団となり、政治方面に出ればドナルド・トランプとなる。

急進派はより急進化する。

プロテスタント(新教徒)はもともとカトリック(旧教徒)の信仰が神の意志に沿っていないという判断で始められた運動である。そのプロテスタントの国のイングランドにおいても、その信仰は物足りないとおもった人たちがアメリカへ渡った。そしてアメリカでの「神政国家」をめざしたのだが、「それでもまだダメだ」という人たちが出てくる。

アメリカは、永遠にそういうサイクルを繰り返していくのだ。

【後編は6月30日公開】