# ひきこもり # 法医解剖 # 人口・少子高齢化

解剖医が「ミイラになった遺体」から考えた、この国の厳しすぎる現実

親と同居していたのに一体なぜ…
西尾 元 プロフィール

法医解剖から見える今後の死の光景

最近、ひきこもり生活をしていた40代の男性を解剖した。男性は親と暮らしていたわけではない。男性は勤めていた銀行を辞めてから、一人で家にひきこもるようになった。

男性が亡くなったのは、ひきこもりの生活を始めてからわずか3年後だった。遺体の体を見るとやせていて、垢で皮膚が茶色になっている。遺体は腐敗していて、解剖しても死因はわからなかった。

男性は、名前を聞けばだれでも知っているような大銀行に勤めていた。そこを辞めてからわずか3年で、一人ひっそり亡くなるようなことが現実に起こっている。ちょっとしたことが原因で、だれでもひきこもり生活をはじめることになる。

決して人ごとではない。

この国では、いま高齢化や単独世帯数の増加、少子化、老老介護、ひきこもりといった問題が話題になっている。解剖台に運ばれてくる人たちは、当たり前の話だが、全員、死亡している。

法医解剖の現場では、今日この国が抱える社会問題が遺体というもっとも深刻な形で現実化している。法医解剖の現場で起こっていることをまずは多くの人に知ってもらうことが必要だろう。解剖する時に、いつもそう感じている。

老老介護の世帯で、亡くなっている二人が見つかるということは、法医解剖の現場では、今やありふれた光景になってしまった。老老介護の現場で起こっていることが、今後ひきこもりの世帯でおこることが予想される。

ひきこもりの人を抱える家庭では、今後、亡くなってからだいぶん時間が経った親の遺体とそれと比べればあまり時間が経っていない子の遺体が同時に見つかることになる。

ひきこもりの問題をこのまま放置すれば、今後、そういった死のありさまが、この国の死の光景として、ありふれたものになっていくことになるだろう。

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