# ひきこもり # 人口・少子高齢化 # 法医解剖

解剖医が「ミイラになった遺体」から考えた、この国の厳しすぎる現実

親と同居していたのに一体なぜ…
西尾 元 プロフィール

老老介護の現場で起こっている現実

ひきこもり問題の今後を考える時、老老介護の現状が参考になると思われる。今では、法医解剖の現場には、老老介護世帯の人が運ばれてくることが多くなった。

しかも、老老介護の当事者である二人、つまり、介護する人と介護される人の二人が同時に運ばれてくることが珍しくなくなった。

 

認知症の妻を介護していた夫が、自宅の浴槽で死亡しているところを見つかった。夫婦はともに80代。この夫婦を見つけたのは、定期的に訪問している看護師だった。

浴槽の中で亡くなっている夫を看護師が見つけた時、亡くなっている夫のそばで、妻は裸のままだったという。

この夫婦の状況から考えると、妻の入浴を補助していた夫が何かの拍子に浴槽に頭から逆さまに落ち込んでしまったらしい。解剖すると、夫の死因は溺死だった。

妻は同じ場所にいたのだが、そのことを家の外のだれにも連絡することができなかった。ただその場にたたずんでいるだけだった。妻は夫の死を理解することができなかったらしい。

だが、この夫婦の場合は、まだ幸運だったと言うべきかもしれない。

妻が見つかったのは、夫の死からそれほど時間が経っていないうちだった。夫の遺体が見つかったとき、幸いにも妻は生きていた。

だが、発見が遅れていれば、妻はおそらく同じ浴槽で亡くなっていただろう。私たちのところへは、夫婦が二人とも運ばれてきていたにちがいない。

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