法令違反が7割超、ブラック企業を次々に生み出す技能実習制度の構造

止まらない人権侵害の現状と背景
望月 優大 プロフィール

来日前の多額の借金

二つめの要因は、実習生が来日前に作っている多額の借金だ。

実習生を集める送り出し機関の中には、日本への渡航に必要な費用として100万円を超える金額を要求するところもある。多くの実習生候補はこの渡航前費用を支払うことができないため、多額の借金をしている。さらに、保証金や違約金の契約を結び、家族などを保証人に入れさせられるケースも存在する。

なぜ実習生側は多額の借金という大きなリスクを取るのか。それは、日本で働けばその借金を返済してもなお元が取れるほどの給料をもらえるという話を信じているからだ。しかし、その話が真実であるためには二つの条件が必要である。

一つは賃金が事前の約束通りに支払われるという条件、そしてもう一つは実習先で借金返済に必要な期間は働き続けられるという条件である。これら二つの条件のうちいずれかの条件が崩れると、実習生は窮地に追い込まれる。

 

一つは賃金が約束より低い場合。約束が守られなくても借金が減るわけではないため、契約賃金以下、時には最低賃金以下の低賃金で働き続けることを余儀なくされる。どんなに過酷な労働環境でも、あるいは職場で暴力やセクハラが横行していても、最初の借金がなくなるわけではないので帰国という選択肢を選ぶことができなくなってしまう。

もう一つは「強制帰国」の恐怖で脅される場合である。強制帰国とは、実習期間の途中に、本人の意思にかかわりなく、実習先(含む監理団体)側の理屈で無理やり帰国させることである。強制帰国の恐怖によって、借金の返済前には帰国できない実習生が、実習先の言いなりにならざるを得ないという構造がある。

来日前に作ってしまった大きな借金のせいで、多くの実習生は「進むも地獄、退くも地獄」の状況に追い込まれてしまうのだ。