法令違反が7割超、ブラック企業を次々に生み出す技能実習制度の構造

止まらない人権侵害の現状と背景
望月 優大 プロフィール

法令違反とその不可視化

技能実習制度に常につきまとってきたのが劣悪な労働環境だ。長時間労働、最低賃金違反、残業代の不払い、安全や衛生に関する基準を下回る職場環境、暴力やパワハラ、セクハラなどである。

2017年に厚労省が労働基準監督署を通じて全国約6000の事業場を対象に行った監督指導では、なんとその7割以上で労働基準関係法令違反が認められた。7割以上というのは圧倒的な数字である。何のために法律があるのかと考え込んでしまうほど高い割合だ。

技能実習の実施者に対する監督指導状況

違反の内容は、労働時間に関する違反が最多の26.2%、以下、安全基準、割増賃金の支払いや就業規則に関する違反、労働条件の明示や賃金の支払いそのものに関する違反などが続く。

技能実習の実施者による主な違反事項

しかし、こうした外部からの調査がなければ現場の法令違反が明るみに出ることはほとんどない。同じ厚労省の調査によれば、2017年に技能実習生から労基署に対して法令違反の是正を求めてなされた申告はわずか89件に留まった。

厚労省が監督指導した約6000の事業場も含め、実習生を活用している企業はおよそ4万8000社にのぼる。そして、実習生自体は2017年時点で25万人以上も存在していたのだ。

にもかかわらず、実習生から労基署に対してなされた申告は1年間でわずか89件しかなかったわけである。本来なら届くべき声の多くが届かず、不可視の状況に置かれていることが容易に想像されるだろう。

 

こうした数字を見ると、否が応でも二つの疑問が頭をもたげてくる。一つめは、なぜこんなに多くの法令違反が横行しているのかという疑問。もう一つは、70%以上もの企業で法令違反があるにもかかわらず、なぜほとんどの技能実習生は労基署に対して助けを求めることができないのかという疑問である。

法令違反の横行とその社会的な不可視化には、技能実習の制度そのものに埋め込まれたいくつもの構造的な要因が絡まり合っている。このあと順に見ていきたい。