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法令違反が7割超、ブラック企業を次々に生み出す技能実習制度の構造

止まらない人権侵害の現状と背景

政府は今年4月に「特定技能」という在留資格を新設し、外国人労働者の受け入れを一層加速している。しかし、そのことに気を取られて忘れてならないのは、様々な問題を抱えた「技能実習」という制度がそのまま残っているという現実だ。

4月以降も、例えば岐阜の婦人服製造業者の社長が実習生を時給405円で働かせていた疑いで逮捕(労基法違反)されるなど、一部の実習生を取り巻く労働環境の劣悪さや人権侵害の状況は変わっていない。

つい先日放送されたNHK「ノーナレ 画面の向こうから」でも、実習先から逃げ出さざるを得なかったベトナム人の若い女性たちの苦境が取り上げられ、今も大きな話題となっている。

なぜ技能実習生の人権侵害は一向に止まらないのか? 実は実習先企業のなんと7割以上で労働基準関係法令違反が認められているという実態がある(厚労省調査)。もはや一つひとつのブラック企業の問題として捉えるだけでは不十分だ。人権侵害が止まらないより根本的な理由、つまり制度や政策のあり方そのものを理解する必要がある。

そこで、この記事では、新刊ふたつの日本――「移民国家」の建前と現実(講談社現代新書)の第4章「技能実習生はなぜ「失踪」するのか」から、技能実習制度の現状と構造的な問題を整理したパートを特別公開する。読めば、技能実習生が晒されているリスクとその背景にある構図を理解してもらえるはずだ。

 

技能実習生の増加と多様化

技能実習制度については、劣悪な労働環境や様々な人権侵害に関してこれまでも数多くの指摘がなされてきた。近年では、実習生の数が一気に増加する中で、実習先から「失踪」する実習生も増えている。

技能実習とはどんな制度なのか。なぜ日本はこの問題だらけの制度を外国人労働者政策の一つの基軸としてきたのか。技能実習制度の説明に入る前に、直近の実習生の状況について整理しておきたい。

まず、技能実習生の数は伸び続けている。特に2015年ごろからここ数年の伸び幅が大きく、2011年には14.2万人だったそれが、2018年6月末には28.6万人にまで急増している。

出身国別に見ると、1位のベトナムが13.4万人。そのあとに中国(7.5万人)、フィリピン(2.9万人)、インドネシア(2.3万人)、タイ(0.9万人)と続く。ベトナムだけで全体の46.9%を占め、2位の中国と合わせると全体の約4分の3(73.2%)を占める。上位5ヵ国で全体の94.4%だ。

技能実習生数(国籍別)

つまり、技能実習生に関わる問題とは、そのほとんどがベトナムと中国を中心とするアジア諸国出身者との間での問題であるということができるだろう。

出身国別の特徴で押さえておきたいのは、2011年時点では全体の75.8%を一国で占めていた中国の割合が2017年には28.3%にまで急減していることだ。この変化は、中国人実習生の実数自体が減少していることに加え、ベトナムやフィリピンなど、その他の国からの実習生の数が増加していることにも起因している。

1993年の制度創設以来、常に技能実習生の大きな割合を占めてきたのが中国出身者だった。しかし、中国自身の経済成長もあり、中国からの流入はすでに減少を始めている。そして、その穴を埋めるように、ベトナムなど中国より貧しいその他のアジア諸国からの流入が増加しているのだ。