島沢優子さんは、スポーツや教育関係に詳しいジャーナリスト。長らく教育の現場を取材し、『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実』『部活が危ない』『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』など数多くの著書がある。

今まで様々な指導者に出会い、子どもたちを伸ばす教育や育児について実感するとともにエビデンスを学んできた。自身もバスケットボールの全国優勝経験をもつので、部活や体罰問題も身にしてみて体験してきた。保護者向けのセミナーや講演も多く、個々の相談にも応じる。その島沢さんが提案するのが、今までの凝り固まった思考から一歩踏み出した「アップデートした子育て」だ。連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」にて、具体例とともにお伝えしていく。

今回は自分でできない子どもにしてしまう「すべて先回りする」ことについて。しかも祖母がやってしまうという例が、実は多いのだ。

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中学生の息子の世話をし続ける祖母

「そこまでやるの!?」

首都圏に住む40代会社員の男性会社員は、同居する実の母親に何度そう言い放ったかわからない。中学2年生の長男に対する「ばあちゃんの過保護ぶり」(男性談)に呆れてしまっていた。

中学1年生のときのこと。

朝はばあちゃんが朝食を食べさせるため「食べ残すな」「あれも食べろ」とそばで世話を焼く。部活動の用意、体育着など忘れ物のチェックまで細かくやる。
極めつけは、自転車の荷台にカバンや荷物をくくりつけてやる。「どこかに落としたら大変だ」としっかり固定してから、見送る。

幼児ならともかく、中学生に細かくあれしろ、これするな、と世話を焼くのは…… Photo by iStock

共働きのため家にいない妻に代わって、放課後は持ち帰ったものと宿題チェック
体育着は出したのか?制服はハンガーにかけたのか?今日は何の宿題?やったのか?まだなのか」と言い続ける。

早く食べなさい」「ゲームしてないで早くお風呂に入りなさい」「早く寝なさい」といった具合に、夕ごはん、入浴、そして寝るまでずっと孫に世話し続けるのだ。

「このままじゃ、自分で何もできない子になっちゃう」と妻は心配顔。実際に、長男はぼんやりしていて、さまざまなことを自分で決められないところがある。

できない子だから世話をやくんだ

男性もやりすぎかなと思うし、「ばあちゃん、上履きはどこ?」などと常に祖母に頼りっぱなしの息子に不安を覚えないこともない。

「私じゃ言えないから、言ってよ。お母さんに」
妻から言われ、一度「世話を焼きすぎるのではないか」やんわり言ったら、百倍返しされた。

ばあちゃんの言い分はこうだ。

長男はやらなくてはいけないことをすぐに後回しにする。準備しないから忘れ物も多い。それは母親(妻)にそういうところがあるからだ。学校への提出書類など、いつも「忘れてた」と慌てている。自分はできていないのに、子どもに言うのか。

「あの子がそうなったのは、あの人のせいだからね。世話しないと、ずっと忘れ物が続くよ。それじゃ困るでしょう」

ばあちゃんの剣幕に男性はあっけにとられ、妻は泣いて寝室へ行ってしまった。
「母は男勝りな人で、気が強いんです。昔は家業をしていた嫁ぎ先でかなり苦労してきたらしくて。そのあたりを思うと、僕もなかなか言い返せなかった」と男性は下を向く。